小飼社長、「構造改革ステージ2」で実用化と宣言
マツダは独自の技術群であるSKYACTIVの第2世代(Generation 2)商品の投入を2018年度までに開始する計画だ。SKYACTIV(以下SKYと表記)は2011年に、先代『デミオ』の1.3リットルガソリンエンジンから商品化が始まり、その後の同社の業績回復と拡大に大きく寄与している。
第2世代では自動車用ガソリンエンジンで、世界でも前例のない「HCCI(予混合自己着火)」という燃焼技術の実用化を目指している。このエンジンを元に、5月に提携拡大で合意したトヨタ自動車の技術を融合したハイブリッド車(HV)などの展開も予想され、第2世代SKYの開発動向には国内外から熱い視線が注がれる。
第2世代技術を採用したモデルの投入計画は、4月の決算発表会見で小飼雅道社長が明言した。マツダは16年度から18年度まで、中期計画に相当する「構造改革ステージ2」に取り組む方針であり、小飼社長は「この期間中に第2世代モデルの導入を開始する」と語った。中期計画に関する概略資料では第2世代SKYについて「究極の燃焼技術と電動化技術を組み合わせ、劇的に燃費性能を改善」と言及している。
◆世界でも未踏の「HCCI」燃焼への挑戦
ここで言う「究極の燃焼技術」とはエンジンの圧縮比を高め、混合気中のガソリンの比率を極めて少なくする「均質リーンバーン(希薄燃焼)」のことだ。ガソリンを極端に希薄にするため、点火プラグによる着火だけではうまく燃えない領域が多くなり、軽油を燃料とするディーゼルエンジンのように圧縮着火させる必要がある。圧縮着火の技術のひとつが「HCCI」であり、世界の自動車メーカーのほとんどが、ガソリンでのこの着火・燃焼方式の研究やエンジン開発などを進めている。だが、自動車での市販は実現していない。
マツダは1年半ほど前の報道関係者向け技術説明会で、第2世代SKYのガソリンエンジンではHCCI燃焼の実現を目指すと公表していた。ただ、この時は製品の投入時期は示しておらず、今回初めて明らかにされた。開発が着実に進んでいるという証左だろう。
第2世代では燃焼効率を高めるため、圧縮比は現行のSKYガソリンエンジンで世界最高の14(1.3リットル型の場合)となっているのを、さらに16~18まで高める必要があるという。点火プラグによる着火と補完し、HCCIは主として低負荷から中間負荷領域で使うそうだ。繊細な燃焼制御が必要なので、世界で異なるガソリン性状(構成成分)への対応も課題とされるが、マツダはEGR(排ガス再循環装置)技術で克服できるとしている。
◆第2世代エンジンでトヨタとPHVなどの共同開発も(?)
SKYエンジンの開発指揮を執る人見光夫常務執行役員は、第2世代は現行SKYより約3割の燃費改善が可能であり「HV並みの燃費を目指したい」と話していた。今のデミオの1.3リットルガソリン車の燃費は24.6km/リットル(JC08モード)なので、3割改善すれば32km/リットル水準と、まさにHV並みだ。
人見氏はまた、このエンジンをHVに使えばモーターの出力やバッテリーの容量を抑制することができ、HVシステムの小型・軽量化につながるとも指摘する。当然、HVだけでなくPHV(プラグインHV)への応用でも同じ効果がある。大量のバッテリーによる高コストや車室スペースの圧迫といったPHVの課題を、一気に克服することができる。マツダとトヨタの提携拡大のターゲットが向かう先のひとつとは、ここらにあるのではないか。