1996年に初の本格FF1ボックスカーとしてデビューした『ステップワゴン』。5代目となる新型が登場し試乗する機会を得た。
新しいステップワゴンは基本的には先々代からプラットフォームをキャリーオーバーしている。とはいえ、さまざまな部分でのリフレッシュも施されていて、走りに大きく関係する部分ではリヤショックを垂直にレイアウトすることでフリクションを低減するなどの手法が採られている。
エンジンは新設計の1.5リットル4気筒ターボ。いわゆるダウンサイジングターボで、150馬力を発生。過給器付きエンジンながら、レギュラーガソリン仕様となっている。組み合わされるミッションはCVTのみの設定。
新型ステップワゴンにも従来同様に標準タイプとスパーダの2種類が用意される。スパーダは2代目から設定されたグレードで、エアロパーツ装着を中心としたエクステリアのドレスアップが施されている。以前はフェンダーがワイドタイプとなったり、2.4リットルエンジンが搭載されたりで3ナンバーとなったこともあるが、新型は全長が4.7m超となるため3ナンバー登録となるという珍しいパターン。スパーダは標準タイプに比べて45mm長いのだが、この45mmはすべてエアロパーツなどの装着によるもの。
スパーダはエアロパーツの装着だけでなく、サスペションのチューニング変更なども行われている。基本的にはスポーツ方向へのチューニング変更。ショックやスプリングのみならず、ベアリングなども含めたシャシーのグレードアップとなっている。
驚いたのはスポーツ方向のチューニングが施されたスパーダの乗り心地がよかったこと。標準タイプに比べてもリヤサスペションの動きがよく、落ち着いた挙動を示している。試乗車は標準もスパーダもどちらも同じ銘柄で同じサイズのタイヤが装着されていたので、これはサスペションを含めたシャシーがスパーダの乗り心地を向上していることになる。
エンジンは1.5リットルとは思えないトルクフルな特性。最大トルクの203Nmはわずか1600回転で発生し、それをフラットなまま5000回転まで維持する。こうしたトルク特性なのでCVTとのマッチングもよく、きつめの勾配の登り坂もグイグイ力強く登っていく。ターボラグも感じることはなく、素直で扱いやすい。
コーナリングはミニバンとしてはスポーティなものと言える。ターンインからクリップにつき脱出するまでの間、タイヤの接地感がつねにステアリングに伝わってくる。4輪がしっかりグリップしている感覚はさすがホンダ車という味付けだ。ワインディングを走っているとかなり楽しめるのだが、このペースで走ったら後席に乗った家族からはブーイングが起きるだろうな…という心配も生まれた。
ユーティリティ関連については、標準モデルの試乗記で触れたいと思うので、そちらを参考にしていただきたい。
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★
諸星陽一|モータージャーナリスト
自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活躍中。趣味は料理。