マツダは5月19日、4代目となる新型『ロードスター』を発表した。同車は、マツダの掲げる一連の「SKYACTIV技術」とデザインテーマ「魂動」を採用する”新世代商品”の第6弾にして、その“トリ”を飾る重要なモデル。
発表会において開発主査を務めた山本修弘氏は、ロードスターの価値について第一に「誰もが一瞬で心ときめくデザイン」を上げた。
◆煮詰めた末に到達する“色気”
マツダのデザインへのこだわりはこれまでも様々な場所で議論されてきたが、そのデザインを語る上で外せない要素として“面”への強いこだわりが挙げられる。
“面”へのこだわりについて、マツダデザインを統括する前田育男デザイン本部長は「最近これだけ立体を練りこんでいく会社は少なくなってきている。デジタルで瞬時に作ってしまえる時代なので、乱暴にやればクルマのデザインは一瞬でできてしまう。しかし我々はできてからがスタート。何ヶ月やり続けたかというくらい一生懸命力を入れ、煮詰めていくと色気が出てくる」と話す。
マツダは元々クレイモデラーの手に委ねる部分が非常に強く、前田氏も「それが我々のDNA」と話す。しかし、プロポーションの美しさにこだわり出したのは魂動デザインからだという。
「タイヤとエンジンがあり、プラットフォームにボディを乗せ、クレイを造り込んでいくというのがこれまでの手法。そうすると、面は綺麗だが引いてみると何か変というのがこれまではあった。プロポーションというのが一番重要で、フォルムというのはその次。これまでとプライオリティを逆転させた」(前田氏)。
◆艶っぽさを表現する演出へのこだわり
今回発表の場に選ばれたのは都内のイベントホール。この場所で発表会を開催した理由について、前田氏は「演出での1番のポイントはこの会場。ホテルのホールなどは、シャンデリアなどがありごちゃごちゃしている。ここが見つけられたのが1番良かった」と話す。
今回、ステージ上の天井には大きな円形のライトが掲げられ、その下に赤と白の個体が鎮座していた。この狙いについて前田氏は「スポットだけで照らすとボディにラインは入らない。あれはリフレクションを作り出す機械のようなもので、あれがないと墨絵のようなボワっとした印象になる。スポットだけだと、色は映えるが艶っぽさがなくなってしまう」と述べる。
会場は黒を基調とした落ち着いた印象で、壁などは特にいじらず、最近のマツダのディーラーコンセプトほぼ一緒。会場を見つけた時は「あっこれだ!」と気持ちになったという。
「普通は、カタチがわからなくなるので周りの環境を映し出すのを嫌がる。マツダの考えは逆で、リフレクションが入ることで、どんな立体を作っているかというのがよくわかる。あえてあの”円盤”を造り始めた」(前田氏)。
◆魂動デザインの結実と今後の進化
マツダはロードスターをもって“新世代商品”のフルラインアップを完成させたが、この先はどうなるのか。これだけ完成度の高いものを出してしまうと、次の一手は恐ろしくハードルの高い作業になるだろう。前田氏は、相当難易度は高いとは認めながらも次のように述べた。
「これまでは、“ブランドを束ねていく”と表現してきた。今後は(デザインの)方向性をある程度継続させながら、誰が見てもわかるような“進化”を描いていく。もう一段進化した姿を見せていきたいので、是非期待してほしい」(前田氏)。