のと鉄道『のと里山里海号』、金沢直通の可能性は?

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4月29日から運行を開始する『のと里山里海号』。2両編成の「ゆったりコース」と、普通列車に1両増結する「カジュアルコース」が設定される。
  • 4月29日から運行を開始する『のと里山里海号』。2両編成の「ゆったりコース」と、普通列車に1両増結する「カジュアルコース」が設定される。
  • 4月15日の試乗会で配布された記念乗車証(上)と試乗券(下)。「ゆったりコース」は復路分の乗車券などを含むセット料金での提供になる。
  • 「ゆったりコース」は通常より30分長い約70分かけて七尾~穴水間を走行する。
  • 「ゆったりコース」は徐行・一時停止を繰り返し、写真の七尾湾など能登の自然をじっくり眺められるようにする。
  • 「ゆったりコース」では能登中島駅に10分程度停車。同駅で保存されている郵便車のオユ10形(右)を見学できる。
  • 能登中島駅に保存されている郵便車のオユ10形。「ゆったりコース」では内部を見学することができる。
  • オユ10形郵便客車の内部。車内で郵便物の仕分け作業を行っていた頃の姿を再現している。
  • 車内のサービスカウンターで準備作業をするアテンダント。車内販売や記念撮影の手伝い、観光案内などさまざまなサービスを提供する。

のと鉄道は4月29日から、観光列車『のと里山里海号』の運行を始める。当初は事前予約制と整理券方式により、七尾(石川県七尾市)~穴水(穴水町)間の33.1kmで運行されるが、北陸新幹線からのアクセスを考えると、今後は金沢への直通運行も検討課題になりそうだ。

■利用方法は2種類
『のと里山里海号』の利用方法は、事前予約制の「ゆったりコース」と、整理券方式の「カジュアルコース」の2種類を用意。土曜・休日や夏休み期間などを中心とした年間150日程度は「ゆったりコース」として運行し、それ以外の日は「カジュアルコース」として運行される。

●専用列車の「ゆったりコース」
『のと里山里海号』用に新造したNT300形気動車の2両編成を使用。七尾発9時01分・12時22分・15時33分の下り穴水行き『のと里山里海1・3・5号』と、穴水発12時02分・15時17分の上り七尾行き『のと里山里海2・4号』として運行される。

七尾~穴水間の所要時間は約70分。車窓をじっくり楽しめるよう、通常より30分程度長い時間をかけて、ゆっくりと走る。「ボラ待ちやぐら」や中能登農道橋(ツインブリッジのと)などが見える途中数カ所のポイントでは徐行や一時停止を行い、能登の美しい景色を堪能できるようにするという。

営業上の停車駅は七尾・和倉温泉・穴水の3駅だけで、それ以外の駅では乗り降りできない。ただし、能登中島駅では10~15分程度停車。同駅で保存されているオユ10形郵便客車の内部を見学できるようにする。また、全ての列車に専任アテンダントが乗務し、沿線のガイドや写真撮影のお手伝いをするなどして利用者をもてなす。

利用に際しては事前の予約が必要。復路用普通列車乗車券(翌々日まで有効)やお土産用の能登の銘菓などが付いた、セット料金(大人1500円・子供1000円)での提供になる。

このほか、『のと里山里海1・4号』では、能登の素材にこだわったというスイーツを味わえる「スイーツプラン」(大人3000円・子供2500円)も設定。沿線出身の世界的なパティシエとして知られる辻口博啓さんが、能登ミルクを使ったクリームと能登大納言小豆を包んだロールケーキや、珠洲の天然塩と輪島の発芽玄米を使った塩サブレなどを提供する。『のと里山里海5号』でも、能登の地酒を提供する「ほろ酔いプラン」(大人3500円)が土曜のみ設定される。

「ゆったりコース」運行日は、『のと里山里海1・4・5号』と運行時刻が重なる七尾発9時03分・15時33分の下り普通列車2本と、穴水発14時38分の上り普通列車1本が運休し、通常の切符で乗車できる普通列車が減便される格好となる。この影響が今度どのように出てくるのか、気になるところだ。

●定期列車に増結の「カジュアルコース」
定期運転の普通列車にNT300形を1両増結する形で運行する。下りは七尾発9時03分・13時13分・16時23分の『のと里山里海51・53・55号』、上りは穴水発8時40分・12時44分・15時51分の『のと里山里海52・54・56号』として運行。所要時間は通常の普通列車と同じ約30分になる。「ゆったりコース」が設定されていない平日に運行するが、水曜日は車両検査のため運行しない。

増結されるNT300形への乗車に際して事前の予約は不要で、途中駅での乗り降りも可能だ。ただし、通常の運賃とは別に、穴水駅や列車内で発売する整理券(300円)が必要。満席の場合はNT300形には乗車できない。「ゆったりコース」同様、専任アテンダントが乗車して沿線ガイドや写真撮影の手伝いをするなどのサービスを提供する。

■金沢直通運転の可能性
のと鉄道は、定期券以外の切符による利用者(定期外客)の年間輸送人員について、本年度は北陸新幹線の延伸開業や『のと里山里海号』の運行により、これまでより2万人多い約6万人を目指すとしている。

ただ、現在の七尾線の運行系統は、金沢~七尾・和倉温泉間(IRいしかわ鉄道線経由)を結ぶJR西日本の普通・特急列車(電車)と、七尾~穴水間を走るのと鉄道の普通列車(気動車)に分割されている。『のと里山里海号』も運行区間は七尾~穴水間に限定されるため、北陸新幹線から直接乗り継ぐことができない。増客に向けては『のと里山里海号』の金沢直通運転も検討課題になりそうだ。

4月15日の試乗会で報道関係者を案内していた、のと鉄道の蜂須賀和行常務は「(金沢直通の)思いは十分にある。JR西日本にも話はしているが、異常発生時の対応が課題としてあるようだ」と話す。一方、JR西日本は10月から、キハ48形気動車の改造車を使用した観光特急『花嫁のれん』を金沢~和倉温泉間で運行する予定だが、蜂須賀常務は『花嫁のれん』ののと鉄道への乗入れについても「当社としては支障はない」と述べた。

今のところ、直通運転に向けた具体的な動きは見えないが、そう遠くない将来、『のと里山里海号』と『花嫁のれん』が相互に乗り入れて、金沢~穴水間を直通運行する日が来るかもしれない。

《草町義和》

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