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時代はIoTからIoEへ、センサーデータ活用は部門横断で挑め

自動車 テクノロジー ネット

3月5日、虎の門ヒルズにて「テラデータユニバース2015」が開催された。本カンファレンスでは、「次世代のビッグデータ活用」を主題に、IoT(Internet of Things)領域における欧米の先進事例や日本企業の今後の可能性について議論が交わされた。

パネルディスカッションでは、ボルボ・カーズよりコンシューマーITサービスディレクターのヨナス・レンクビスト氏、テラデータ・コーポレーションCTOのスティーブン・ブロブスト氏、アクセンチュアアナリティクス本部マネジャーの野村一仁氏が登壇。モデレーターは日本テラデータマーケティング&ビジネスディベロップメント本部長の景山均氏が務めた。

たとえばドイツでは、政府と産業界が共同で、インターネットを活用した製造業の高度化(“Industry 4.0”)にとりくみ、またGEが“インダストリーインターネット”を提唱するなど、いま世界で製造業におけるデータ活用が注目されている。ディスカッションの冒頭で、「実際にはどのようなビッグデータの活用がされており、そして今後どのような活用がありえるのか、欧州・日本それぞれでの知見をシェアしてほしい」とモデレーターの景山氏が切り出した。


◆データ活用の三段階 センサーがインタラクションをさらに多様化

はじめにテラデータCTOのブロブスト氏がデータ“活用”を段階にわけて整理する。

ブロブスト氏によれば、データ活用とひとことで言っても3つに分けられるという。「1段目はいわゆるドットコムビジネスでの活用を指す。モノ・サービスの購買を誘導するためのクリックや検索でのデータが採られ分析されてきたが、それは現在のデータ分析からみると“非常におおざっぱ”で見劣りする」

そこで2段目として、“トランザクションからインタラクションヘ”の転換がおきる。データ管理エンジンが増えるにつれてデータの量やソースが単純に増大してきたトランザクションの時代から、SNSなどのソーシャルネットでの書き込みやフィードバック、動画配信などのストリーミングデータやIoTのセンサーデータなど、よりリアルタイムにデータがやり取りされるインタラクション時代が到来する。現状はこの2段目だという。

この転換は製造業にとってはどのようなインパクトがあるのか。これまでの製造業は自社の製品を販売店へ届けることはしても、その製品を使う人たちに直接接触することはできなかった。製造業者にとって伝統的なマーケティングリサーチ以外に、自分たちがどう思われているのかを知る手段はなかった。ビッグデータ分析の意義はそこにあるわけで。消費者との直接的な関係を築くことができるようになることが製造業にとってもっとも大きなメリット、という。トランザクションからインタラクションへの転換は製造業者がユーザ、消費者の意見、感情をより深く理解したいというニーズを満たし、消費者のより素直な声を聞けるようにするという意味で、FacebookやTwitterなどのソーシャルメディアはこれを可能にするための重要なツールだという。

そして3段階目は“センサーデータ”を扱うもの。ブロブスト氏は「センサー技術をもちいれば、さらに多様なインタラクションを手にすることができる。今日よく言われる“IoT”もその一つだが、わたしは「モノのインターネット化」よりはむしろ「すべてのモノのインターネット化(IoE:Internet of Everything)」が進むことを強調したい。データ利用のチャンスは無制限なのだから」と物理的なモノや製造業の枠をこえての活用に期待をかける。

ボルボ・カーズのレンクビスト氏も自社製品である自動車を社会の一部としてとらえ、「クルマがネット化することで今後まったく別の産業と協働する機会が増すだろう」という認識を示す。またブロブスト氏は、この3段階目において「製造業では製造プロセスだけでなく、工場から出荷されたのちに、その製品がどのように利用されているかをより的確に把握できるようになるのでは」と推測する。


◆鉄道のコンディション把握にセンサーデータを活用

センサーデータが活用できるようになると、これまでソーシャルメディアから採ってきたデータが“小さいもの”に見えるだろう、というブロブスト氏。鉄道を例にその先進性を説明する。

「鉄道分野でも、いくつか企業はいまセンサーデータの利用にとても積極的に取り組んでいる。具体例でいえば、万が一の脱線を防ぐために。車両の軸受け(ボールベアリング)に振動センサーを、また車両のエンジン部分に温度センサーを装着するなどして安全性の向上に取り組んでいる。センシングによる安全性向上は鉄道に限らず自動車のようなモビリティや製造プラントへも応用可能だ」(ブロブスト氏)。

また自動車業界では、ドライバーの運転をより詳細に把握することにセンサーデータが活用される。運転の仕方がわかると、運転に関するリスクをより適切に把握することができるようになり、リスクの把握は自動車保険の領域に活かされる。もちろんこういった局面でデータを共有するかどうかは各々の意思にゆだねられているものの、データを提供した方が、よりよいドライビングがわかるようになる(ブロブスト氏)。

モビリティにおけるセンサーデータ活用に関して、乗り物それ自体が“センサラブル”である必要性を強調。モビリティが高いパフォーマンスを達成するために、そのデータは、“つくるプロセス”だけでは不十分。工場の外、路上で“運転されるとき”のデータに目を向けられながら活用されなければならない。

最後にブロブスト氏は「センサーデータ活用は領域を問わない」という点を再度強調した。「ドイツはいまスマートシティ分野で先進的といわれるが、その理由はエネルギーの消費パターンや、コンディションの把握、乗り物、建物、そしてそこで生活、利用をしている人々をつなぐことがうまくできているから。すべてのもの(IoE)の繋がりを考えた先に何が実現できるかを考えることが重要となる」。


◆消費者のための製造業として新たなサービスに昇華

次に、製造業をとらえなおす視点が提供される。いまや製造業は、“つくる”という側面ももつ一方で“消費者が使う”モノを売っていると捉える方が実情に近いと言える、とブロブスト氏。アクセンチュアの野村氏も、製造業において「よりユーザにとっての価値に注目が集まっておりその過程で事業の中身が変わる」と述べる。

野村氏は具体例として「トラベルジャパンWi-Fi」を挙げ「日本に来た外国人観光客向けのサービスで、観光客がWi-Fiを使うときに得られる位置データを活用して、周辺観光地のレコメンド(クーポンを配信など)をするサービス。Wi-Fiの基地局を設置して単にWi-Fiにつながるための通信インフラだったものが、位置データをもとに観光をサポートするコンシューマサービスへ変わる。このようにユーザにとっての価値により重きを置きながら、事業内容自体が変わってきている」ケースが見られるという。


◆IIoT領域への投資価値は1400億米ドル

トラベルジャパンWi-Fiのように、データを活用して新たにサービスが生み出されている事例もあるものの、翻って全体的にみた場合日本におけるIIoT(Industry Internet of Things)領域でのデータ活用はどのようになっているのか。アクセンチュア野村氏が解説し、データ活用を高めるための課題と解決への糸口を述べた。

日本におけるIIoT領域への注目と期待は大きい。アクセンチュアの調査結果によれば、現状通りのIIoT投資施策を行った場合は9600億米ドルと、従来比50%の追加投資を行った場合は1兆1000億米ドルと見積もられている。IIoT技術に対する投資を従来比で50%追加することにより、2030年までに累積で1400億米ドルのGDP増加が見込まれており、「日本においてもこれからIoT技術は投資領域として注目されている」と野村氏。

しかしグローバルでみた場合、他の先進国と比較して日本はIIoT領域の進展は芳しくない。野村氏の仮説によると日本がIIoTを促進するにあたっての課題はふたつあり、1つは製品/サービスのガラパゴス化、2つめは新たなビジネスモデルの創出だという。1つめのガラパゴス化については「日本はモノづくりの文化が非常に強く、いわゆる日本の独自技術をつくって海外に展開するのは得意だが、逆にいうと標準化や海外の先進技術を取り込んでサービスをつくるのは苦手なのではないか」とコメント。日本の携帯がガラパゴス携帯といわれるように日本で展開しようとする姿勢が強いことが課題だという。


◆なぜドイツはIndustry4.0を成功させたか 「外の知恵を取り込む姿勢が肝」

この点、参考になるのがドイツのIndustry4.0だという。「Industry4.0の成功要因を調べたところ、海外の知識を積極的に取り込んだことにあると考えられる。国家ビジョン策定に関する調査結果をみたところ、国家ビジョンの策定の中でもMicrosoftやGoogleの専門家を多く擁しているようなところに協力を仰いでIndustry4.0を促進させている。(日本のIIoT促進でも)いかにして最新の知識や技術を取り入れ、活用する風土がつくれるかが課題となるのでは」とコメントした。

2つめの新たなビジネスモデルの創出については「IoTの領域では、これから新しいビジネス、市場を創造するというところに主眼があります。だからどうしたら新しいビジネスモデルをつくっていくかが注目されるところで、この点、新しいビジネスをつくることは日本は得意ではない。“ギャング・オブ・フォー(Gang of Four)”にふくまれるようなApple、Google、Facebook、Amazonの4社はイノベーションをつくっている企業と言えるが、その中に日本の企業の名前はない」

今後ソーシャルメディアやVOC(Voice Of Customer:顧客の意見、苦情をアンケートやインタビュー、市場調査結果などから収集、分析し、顧客の満足を獲得できる製品やプロセスを設計、開発すること)を通じた新しいビジネスをつくる話が盛んになっているがこういった分野での先進事例について共有していただけたら、と述べブロブスト氏にマイクを渡す。


◆データ活用に成功している企業の共通点とは

ブロブスト氏はデータ活用の先進的な企業に共通する要素を二つ挙げる。

一つは、データから得られた知見を次の行動に反映させること。
「確かにAppleなど、はソーシャルメディアからデータを採ることについて非常に洗練されているといえるけれども、データを採ることはあくまで初めの一歩にすぎない。自社製品のデザイン、マーケティングに何が反映されたか、得られたデータが示すことおよびデータからわかることをもとにして行動に移すことができたか、の方が重要。いまやみなさんにとり技術を利用すること自体はとても簡単なはず。だから学んだことを行動に移すことができるように、組織全体が取り組めるようにすることが大切」とコメントする。

二つめは組織全体でデータ活用に挑むこと。
「成功している組織は“部門横断型(cross-functional)”の組織が多いのではないでしょうか。得られたデータを活用するために、マーケティング、デザイン、エンジニアリングのチームが一丸となって動いている」とブロブスト氏は指摘した。

以上、同ラウンドではデータ活用の3段階が整理された上で、さらなる活用段階、センサー活用のための日本での課題、欧米での先進的企業の特徴が共有された。モデレーターの景山氏は「欧米でも日本でもいま起きている変化に気づきはじめていて、変化に対応するための手を皆が打ち始めている」とまとめ、製造業でも今後さらにソフトウェアとの組み合わせが進み新しいサービスに替わっていかないと生き残っていけないという危機感が三者に共通して認識されていたようだ。
《北原 梨津子》

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