4月から「廃駅弁」…石北本線遠軽駅の「かにめし」を買ってみた

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包み紙にオホーツク産のカニが描かれた「かにめし」。
  • 包み紙にオホーツク産のカニが描かれた「かにめし」。
  • ご飯の上にカニとそぼろが乗った「かにめし」の中身。
  • このような風流な販売員さんの姿も、4月から見られなくなる。
  • 『オホーツク』の車内サービス廃止を伝える遠軽駅の掲示。

JR北海道の特急列車でサービスの縮小が続いている。4月1日以降は、札幌~網走間の『オホーツク』全列車で車内サービスが廃止になるが、その余波を受けたのが、永年、遠軽駅で駅弁を販売してきた岡村べんとう屋だ。

ここでは、「かにめし」の立売販売と札幌~網走間の特急『オホーツク』車内での予約販売を行ってきた。予約販売では、『オホーツク』に乗務している客室乗務員を通して車内で注文を受け、遠軽到着に合わせて温かい「かにめし」が車内に届けられていたが、4月1日からの車内サービス廃止で客室乗務員がいなくなると、このサービスがストップしてしまう。

売上げのほぼ9割を車内販売に依存してきた岡村べんとう屋としては、駅売販売だけで採算を維持するのは困難で、これを契機に閉店を決めたという。「かにめし」が登場したのはおよそ50年前で、JR北海道の車内販売駅弁のなかでも1、2を争う人気商品だっただけに、販売が終了してしまうのはなんとも惜しい。

そんなわけで、先日、「かにめし」を求めて遠軽駅に降り立った。岡村べんとう屋は、遠軽駅を出て最初の交差点を右折したすぐの場所にあるので、直接行って購入しようとしたが、あいにく「準備中」の看板が。何回電話をしても話し中なので、ほとんど購入を諦めかけたが、ふと15時台に上下の『オホーツク』が遠軽に発着することを思い出し、急いで遠軽駅へ。ちょうど駅本屋の右側に業務用の出入口があったので、そこに現れるであろう販売員さんを待ってみることにした。ここまでくると、好きなアイドルの出待ちをしているような気分になってしまいそうだ。

『オホーツク』が発車すると、予想どおり、女性の販売員さんが現れた。駄目元で在庫の有無を尋ねてみると、なんと「1個あります」とのこと。うわっ、これはラッキー。小躍りするように1000円を払って最後の1個を手に入れることができた。

もう「かにめし」が手に入らなくなるのかと思うと食べるのがもったいなくなってきたが、さすがに空腹がそれを許してはくれず、16時12分に発車する旭川行きの普通列車の車内で蓋を開けてみた。この列車には1両に2~3人にしか乗っていないので、まったく周囲を気にすることなく駅弁を空けられる。車内で飲食をしただけで睨まれる大都市圏の普通列車とは大違いだ。

ご飯の上には、オホーツク産というカニとそぼろが乗っていて、いかにも駅弁という風味がたまらない。「かにめし」といえば長万部駅のものがあまりにも有名だが、あちらが「こってり系」だとしたら、遠軽駅のものは「あっさり系」とでもいうのだろうか。もちろん、包み紙と箸袋はしっかり持参のブリーフケースに保存しておいた。

遠軽のような、昔からの特急停車駅ですら駅弁が廃止になるほどだから、近い将来、北海道内でも駅弁が買える駅はごく限られた主要駅だけになるのかもしれない。列車の窓でお札と弁当を交換しあう風景は、ますます伝説化していくだろう。

《佐藤正樹(キハユニ工房)》

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