鉄道の災害運休区間、前月末と変わらず…10月末

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台風18号による土砂流入で不通となった東海道本線由比~興津間。予定より早く10月16日に再開した。
  • 台風18号による土砂流入で不通となった東海道本線由比~興津間。予定より早く10月16日に再開した。
  • 10月末時点の災害運休区間。10月中の運休区間は全て月内に再開しており、月末時点での運休区間は9月末と変わらなかった。

自然災害による鉄道路線の運休区間は、10月末時点で4社10線11区間。合計距離は307.2kmで、9月末と変わらなかった。

10月は台風18号による運転見合わせが各地で多数発生。東海道本線の由比~興津間は土砂流入により10月6日から不通となったが、復旧作業が順調に進み10月16日から運転を再開している。台風19号の上陸に際しては、JR九州とJR西日本が一部路線の全面運休を事前に予告。長期不通を伴う深刻な被害は発生しなかった。

11月は信楽高原鐵道が運転を再開する予定。これにより2013年の不通区間が全て解消される見込みだ。

■JR東日本 山田線 宮古~釜石(岩手県) 55.4km
2011年3月に発生した東日本大震災の津波で路盤が流失するなどの被害。代行輸送は行われていないが、岩手県北バスと岩手県交通の路線バスによる振替輸送が行われている。

当初はバス高速輸送システム(BRT)の導入による再開が考えられたが、鉄道による早期再開を求める沿線自治体が難色を示していた。JR東日本は今年1月、三陸鉄道への運行移管案を提示。同社が線路施設を復旧した上で列車の運行は三陸鉄道に移管し、さらに10年分の赤字額に相当する支援も打ち出した。

岩手県や沿線の自治体は8月、移管案を「有力な選択肢」と位置づけて意思統一を図っており、今後は赤字補てんの拡充などを中心に協議が進められるとみられる。

■JR東日本 大船渡線 気仙沼~盛(宮城・岩手県) 43.7km
2011年3月に発生した東日本大震災の津波で路盤が流失するなどの被害。2013年3月から鉄道復旧までの暫定策としてBRTを導入し、線路敷地の一部を活用したバス専用道を整備した。

現在のBRT運行区間は気仙沼~盛間(長部経由)と鹿折唐桑~上鹿折間、陸前矢作~陸前高田間。このうち竹駒駅付近0.5kmと小友駅付近~大船渡~盛間13.2kmに専用道が整備された。ただし大船渡駅付近は土地区画整理事業に伴い、8月5日から一般道経由に変更されている。8月18日からは気仙沼~鹿折唐桑間の専用道化工事に着手した。

■JR東日本 気仙沼線 柳津~気仙沼(宮城県) 55.3km
2011年3月に発生した東日本大震災の津波で路盤が流失するなどの被害。2012年8月から鉄道復旧までの暫定策としてBRTを導入し、線路敷地の一部を活用したバス専用道を整備した。

バスは気仙沼線の不通区間と同じ柳津~気仙沼間で運行されており、陸前戸倉~志津川間のうち陸前戸倉寄りの3.5km、志津川~清水浜間の中間部3.8km、歌津~陸前小泉間のうち陸前小泉寄りを除く5.1km、本吉~小金沢間のうち本吉寄りの2.0km、陸前階上~最知間とその前後の5.0km、不動の沢~気仙沼間3.3kmは専用道を走行する。ただし志津川~清水浜間は早朝や夜間の一部を除いて専用道を通らず、一般道区間に設置したベイサイドアリーナ駅を経由する。

■JR東日本 石巻線 浦宿~女川(宮城県) 2.5km
2011年3月に発生した東日本大震災の津波で路盤が流失するなどの被害。浦宿~女川間でバスによる代行輸送が行われている。2015年春の再開を目指して復旧工事が行われており、終点の女川駅は内陸側に移設される。

■JR東日本 仙石線 高城町~陸前小野(宮城県) 11.7km
2011年3月に発生した東日本大震災の津波で路盤が流失するなどの被害。代行バスは不通区間の外側を含む松島海岸~矢本間で運行されており、列車と代行バスの乗換地点も松島海岸・矢本両駅となっている。

津波対策としてルートを内陸側に移設する工事が現在進められており、2015年6月までに再開する予定。また、東北本線塩釜~松島間と仙石線松島海岸~高城町間の線路が隣接する部分に新しい接続線(仙石線・東北本線接続線)を整備する計画があり、高城町~陸前小野間の再開と同時に開業する予定だ。これにより、仙台~石巻間を東北本線~接続線~石巻線経由で結ぶ列車が「仙石東北ライン」の愛称で運行される。

■JR東日本 常磐線 竜田~原ノ町(福島県) 46.0km
2011年3月に発生した東日本大震災による福島第一原子力発電所事故の影響で運休中。バスによる代行輸送や振替輸送は行われていない。途中の夜ノ森・大野・双葉各駅は帰還困難区域内で、被害調査も実質不可能な状態が続いている。これに対して富岡・浪江・桃内・小高・磐城太田各駅は避難指示解除準備区域に移行している。

並行する国道6号は9月15日から、自動車で通過する場合に限定して通行規制が解除された。これを受けてJR東日本は、いわき駅または竜田駅から原ノ町駅までを結ぶ代行バスの運行を検討している。

■JR東日本 常磐線 相馬~浜吉田(福島・宮城県) 22.6km
2011年3月に発生した東日本大震災の津波で路盤が流失するなどの被害。バスによる代行輸送は不通区間より広い相馬~亘理間で行われており、宮城方の列車とバスの乗換地点も浜吉田駅ではなく亘理駅となっている。

ルートを内陸側に移設した上で、2017年春にも列車の運行を再開する予定。今年5月から線路の工事に着手している。

■JR東日本 只見線 会津川口~只見(福島県) 27.6km
2011年7月の豪雨で橋桁が流失するなどの被害。バスによる代行輸送が行われている。この区間はもともと利用者が極度に少なく、JR東日本は10月末時点で復旧の可否を明らかにしていない。福島県と沿線自治体はJR東日本に対し、復旧工事費の約4分の1を負担する提案を行っている。

■大井川鐵道 井川線 接岨峡温泉~井川(静岡県) 10.0km
8月から続く大雨の影響で土砂崩れが発生し、9月2日から末端側の接岨峡温泉~井川間のみ運行を見合わせている。復旧には相当な時間がかかる模様。

■JR東海 名松線 家城~伊勢奥津(三重県) 17.7km
2009年10月の台風18号により橋台の流失や土砂の流入などが発生。バスによる代行輸送が行われている。JR東海は当初、鉄道を廃止する方針を打ち出していたが、関係自治体が鉄道施設周辺の治山事業などを実施することを条件に復旧の方針に転換した。2015年度内の再開が予定されている。

■信楽高原鐵道 信楽線 貴生川~信楽(滋賀県) 14.7km
2013年9月の台風18号による大雨で橋桁が一部流失し、全区間運休中。バスによる代行輸送が行われている。一時は廃止の可能性も取りざたされていたが、滋賀県の支援や国の補助により復旧が決まった。復旧工事はほぼ完了し、11月29日に再開する予定。

《草町義和》

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