東大生にトヨタデザイン本部長が語る「デザインのわけ、スタイルの意味」

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3人の学生とのトークセッション
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  • 福市得雄氏
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デザイン本部長が、自社のデザインについて語る。そんな贅沢な授業が東京大学で開催された。本郷キャンパスで10月9日に行われたのは、トヨタデザイン本部長とレクサスインターナショナルのプレジデントを務める福市得雄取締役・専務役員による「出張授業」。

これは日本自動車工業会が全国各地の大学と連携して、会員メーカーのトップがみずから講演する「大学キャンパス出張授業2014」の第1回として開催されたもの。同会によれば、クルマやものづくりの魅力を若者に直接語り、興味を喚起することが狙いだという。

「デザインには企(わけ)があり、スタイルには意味がある。」

第1回目の講演タイトルは「デザインには企(わけ)があり、スタイルには意味がある。」 会場となった伊藤国際学術センターには、およそ320人の東大生が参集。熱心に、そしてときに織り交ぜられるジョークに笑いながら耳を傾けた。

講演は自己紹介から始まり「デザイン本部が取り組んでいること」「トヨタ/レクサスそれぞれのデザイン戦略」と続く。ブランド戦略に基づいてデザイン戦略が練られていることや、その詳細が解説された。

トヨタについては、プロポーションが重視され個性を殺すことが求められるファッションモデルと、顔つきをはじめとした個性が重視されるハリウッドスターの違いを例に、全体とフロントエンドそれぞれの重要性を説明。

その他にトップシェアを誇る日本と少数派の欧州、中国などでは戦術を変えていることなどが詳しく語られた。またレクサスについてはデザイン・アイデンティティに込められた意図やその展開について解説。

さらには「錯視を利用したデザイン手法」として、見た目の印象を左右するスタイリングのテクニックまで公開するなど、現役デザイナーが聴講しても参考になる、驚くほど中身の濃い内容だった。

その後は、経済学や化学を学ぶ3人の東大生を壇上に招いてのトークセッション。ここでは「デザイン業務に限らずあらゆる業界で、情報を蓄積し、それを右脳と左脳でキャッチボールすることが必要」といったことが語られた。

ものづくりの普遍的な力を伝える

ところで、なぜプロダクトデザイン学科のない大学でデザインの講演を行ったのか。実は東大で開催することは、福市氏から要望したことだったという。「ものづくり」が持つ普遍的な魅力を、デザインを題材にして伝えることが本意だったのだ。

福市氏は学生に向けたメッセージとして「未来を創造する、時代を切り開く、リスクを背負いながら挑戦する、そういう気持ちを持ってもらいたい」「エモーショナルに未来を俯瞰して、五感で物事を作り上げてゆくことが、これからの日本にはすごく大事」といったことを語る。

さらに、自身が学生時代に世界を放浪した経験を元に「いろいろな人の価値観を理解する能力、相手の言うことに対する理解力というものが大事」と、幅広い視野を持つことや多様性を認めることの必要性を訴えた。

またメディア関係者から「若者のクルマ離れ」について訊かれると、その旧来の価値観のみに基づく紋切り型の解釈をやんわりと否定する。「現在のクルマの使い方は昔と違っている。だから私は、昔と同じようにMTで走り回れとは言わない」

「クルマをIT機器のひとつと考えてもいい。若者たちには『いまの時代だからできる、クルマの楽しい使い方』を考えてもらいたい。そういう発想が次世代のクルマを作り出すのではないでしょうか」

会場の外にはトヨタの『クラウン』と『i-ROAD』、燃料電池車の『ミライ』、レクサスの『NX』、『RC』が並べられた。下校中に足を止めて眺める学生も多く、なかには説明員の話に聞き入る姿も見られた。

この出張授業は、今後2015年1月までに全国で12回が開催される予定。講演者の顔ぶれには自動車メーカーをはじめ2輪メーカーやトラックメーカーのエグゼクティブが並ぶ。このイベントを通じて創造力のある若者が育ち、その能力を発揮できる日本企業が増えることを望みたい。

《古庄 速人》

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