【スズキ ハスラー 試乗】なぜハスラーが売れるのか、その本質に迫る…中村孝仁

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スズキ・ハスラー
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一時は納車まで7か月とも言われた大ヒット作のスズキ『ハスラー』。少しは落ち着いたものの、それでもボディカラーによっては依然として2~3か月待ちだという。その人気の秘密に迫ってみた。

人気の分析は色々なところで行っている。曰く、クロスオーバーSUVという新ジャンルが当たったとか、派手目でカラフルな色彩が良いとか、価格設定がうまかった等々。それらはすべて正しいと思う。しかし、現車を目のあたりにして感じた最大の理由は、そのスタイルにあると思うのである。

このクルマ、昨年の東京モーターショーでまずはコンセプトカーとして登場した。その時、ブースの中央を飾ったのは、市販型とは異なるハスラークーペなるモデル。そして実際の市販型もまだコンセプトとして展示されていたのだが、それはフロアに平置き。だから大勢の人に取り囲まれ、そう簡単には近づけないほどの人気ぶりであった。つまりクーペは高嶺の花だが、セダンなら…ではないが、現実に手の届きそうなモデルという印象を強く植え付けた。

そもそもデザインはAピラーの立ったロングルーフスタイルで、これ自体は『ラパン』が採用した手法だから、まあ珍しいものではないが、この基本を緩くて、鮮やかなカラーリングで仕上げたところが人気の秘密だ。それは見ていてまさに現代のゆるキャラに相通じるデザインで、それが人々の心をくすぐったのではないかと思うわけである。

独特な涙目状のヘッドライトデザインが醸し出す顔つきは、まさしくゆるキャラそのもの。インパネも白もしくはオレンジと、常識的な黒を覆してパッと明るいインテリアを作り、シートのパイピングはボディカラーに合わせるなどの細かい配慮をした結果、間違いなく女性顧客を取り込める基礎を作り上げた。

その上で本格的軽オフロード車のパイオニア、『ジムニー』に倣って、高い最低地上高や本格的なアプローチアングル、デパーチャーアングルを持つボディスタイルは、さすがにジムニーのような本格的4WDシステムではないが、それでも十分にクロスオーバーSUVの雰囲気とオフロードカーの雰囲気を醸し出すのに成功しているから、ゆるキャラデザインでも男性顧客の心も掴めるというわけである。

ベースは『ワゴンR』なので4WDシステムはヴィスカスカップリング方式。しかし、ワゴンRと違ってタイヤサイズは1インチアップの15インチを装着している。車高が高いのはそのせいもある。ただ単純にクロスオーバーSUVを名乗るわけではない。グリップコントロールなる、滑りやすい路面で発進を容易にする機能や、同じく滑りやすい下り路面を安心して走れるヒルディセントコントロールなど、凝ったメカニズムも採用されているのである。

ちょっと気おくれするようなキャンディピンクメタリックのカラーをチョイスして乗り出してみた。グレードは最上級のXターボである。まだハスラーにはS-エネチャージの設定はないが、いずれは設定されるはずである。

極力燃費を低減させる目的でスズキは13km/h以下に車速が落ちるとアイドリングストップが機能する設定になっている。つまり、エンジンが止まる。しかし、この領域ではまだ、最後の最後でブレーキ圧を弱める運転をするケースがままある。そんな際、エンジンは再始動してしまってせっかくのアイドリングストップが使えなくなるケースが頻繁に起きる。再度エンジンを停止させるには、車速がいったん5km/h以上にならないとアイドリングストップの設定ができないからだ。S-エネチャージではそれが1km/hに引き下げられているからほとんど問題ないが、現行のエネチャージではアイドリングストップを逃すケースが多発するのである。

やはりターボの威力は絶大で、加速性能は下手な小型車をも凌ぐのではないかと思えるほど俊敏だ。元々車高が高くさらに15インチタイヤで重心もアップしているから、コーナリング中のロールは大きめだし、急な転舵で入力を入れるとかなりグラっとくる。というわけで、速いコーナリングは苦手だが、このクルマにはそんな能力はまず求められていない。

室内の広さは印象的。それにアウトドアに適したプラスチック製のシートバックを持つから、濡れたものや汚れたものを室内に持ち込んでも対応できる。

とにかく遊び心満載で、それなりのオフロード走行性能を持ち、比較的凝ったメカニズムと親しみやすいデザイン。ハスラー人気の秘密はこんなところにありそうだ。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★
おすすめ度 :★★★★


中村孝仁|AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来36年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。
《中村 孝仁》

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