6年前に廃止された高千穂線の駅や線路を活用した鉄道公園を管理・運営する高千穂あまてらす鉄道は、新幹線車両をモチーフにした新型スーパーカート「ハヤタケル号」を導入。9月から遊具鉄道での運行を開始した。
「ハヤタケル号」は、これまで運行してきた「天空号」「雲海号」と同様、軽トラックを改造したスーパーカートで、10人乗り。当初は夏休み中にデビューさせる予定だったが、車輪などの細かいチェックが予想よりかかり、9月からとなった。旧高千穂駅~高千穂橋りょう間の片道約3kmを、「天空号」との連結で運行している。
高千穂線は、延岡(宮崎県延岡市)~高千穂(高千穂町)間50.0kmを結んでいた鉄道路線。1935年から1972年にかけて国鉄線として開業し、さらに高千穂~高森(熊本県高森町)間23.0kmの延伸工事も行われた。しかし、国鉄の経営悪化を受けて延伸工事は中止され、開業区間もJR九州を経て第三セクターの高千穂鉄道に引き継がれた。
2005年8月には利用者の減少や経営悪化に伴い、廃止も視野に入れた議論が行われることになり、沿線自治体で構成される検討委員会が発足したが、その直後の9月、台風14号による水害で橋りょうが流出するなどの被害が発生して全線運休に。これが廃止に向けた動きを加速させることになり、2008年12月28日までに全線が廃止された。
この間、高千穂線の再開を目指す民間の動きも活発化し、2006年に同線の運営を引き継ぐことを目的とした神話高千穂トロッコ鉄道が発足した。最終的には資金確保の難航などから高千穂線の引継ぎを当面断念することにしたが、その一方で高千穂駅に整備する鉄道記念公園の管理と同駅周辺の線路を活用した遊具鉄道の運営を行う方針に転換。2008年4月に現在の社名に変更した。
その後、2010年から高千穂駅から天岩戸駅までスーパーカートによる運行を開始。2013年7月からは、鉄道橋りょうとして日本一の高さを誇っていた高千穂橋りょう(全長352.5m、水面からの高さ105m)までの運行も開始した。
今年の夏休み期間中は、台風による大雨や強風によりスーパーカートが運休することも度々だったが、期間中の入場者は4873人とにぎわった。特にお盆前後は特別臨時便を出しても乗れない人が続出するなどの人気ぶりだった。高千穂橋りょう越えの運行は、今年12月まで定休日(水・木曜)や悪天候による休園を除いて実施することが決まっている。
同社の直近の目標は、高千穂橋りょうの先にある全長約3kmの大平山トンネルを抜けて深角駅まで延伸することという。運転手の小手川源実さんは「深角駅は桜の名所。来年の春にはスーパーカートで行って、お客さんに花見をさせたい」と話している。