【池原照雄の単眼複眼】乗用車メーカー8社で温度差…国内の市況判断

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増税の影響は“8社3様”の見解に

国内の新車需要の先行きがやや不透明になっている。第1四半期(4-6月期)決算を発表した乗用車8社の役員の見解にも、意外なほどに温度差が出た。消費税率引き上げに伴う駆け込みと反動減などにより、同期の各社の販売実績にも相当な差が生じているからだ。夏休み明けには、「お買い得車」の設定など、販売てこ入れ策を打つ陣営も相当出てきそうな情勢にある。

決算発表時の各社役員コメントから、消費税増税に伴う混乱の収束に対する見解は3派に大別できる。受注の回復状況などによって、ほぼ収束したと見る「楽観派」。底打ちの判断は尚早と見る「慎重派」。そして、なお厳しいと見る「警戒派」の3グループである。

楽観派は、能天気に楽観しているというわけではなく、今後の展開を含め手ごたえを感じている企業で、ホンダ、ダイハツ工業、三菱自動車工業がこれにあたる。ホンダは『フィット ハイブリッド』などのリコール問題はあるものの、第1四半期の国内販売(グループ販売)は前年同期を44%も上回る20万2000台と、8社で断トツの実績だった。

岩村哲夫副社長は反動減について、「軽微との見通しだったがまさしくオンラインだった」とし、今後の受注動向についても「恐らく夏休み明けには前年並みにもっていけるだろう」と指摘。反動減はほぼ収束との見方を示した。

◆トヨタと日産、反動減収束の判断は尚早と慎重

ダイハツは、6月の段階で新規受注が前年の「100%水準に回復した」(入江誠専務執行役員)という。同社は今期の国内軽自動車販売計画を66万台(前期比6%減)としており、第1四半期の実績は16万台(2%増)。入江専務は「残り9か月で50万台というのは、今後の新モデル投入もあり、決して厳しい数字ではない」と見ている。三菱自動車は「軽の受注残が多く第1四半期は堅調だった。(反動減の)大きな影響はなかった」(黒井義博常務執行役員)と評価した。

「慎重派」は、トヨタ自動車と日産自動車で、第1四半期の販売は小幅ながらいずれも前年実績を下回った。トヨタの佐々木卓夫常務役員は、「7月は登録車が前年を上回ったが、軽を含むとまだ前年割れの状況。底を打ったと判断するにはちょっと早いのでは」と指摘した。日産の田川丈二常務執行役員も同様に、反動減の影響が軽微だったというには尚早との見方を示した。

◆秋の陣は熱を帯びる展開に

そして、残る「警戒派」がスズキ、富士重工業(スバル)、マツダの3社だ。スズキの長尾正彦常務役員と富士重工の高橋充取締役専務執行役員は、期せずして国内販売は「正念場」と表現した。もっとも、同じ正念場でも第1四半期の両社の販売実績は好対照だった。

スズキは増税前に『ハスラー』など軽の新モデルの受注が好調で、第1四半期の販売は10%増の18万4000台と2ケタ増を確保した。それでも同社が正念場と見るのは、受注残の消化が完了する一方、「新規受注が思うように回復していない。増税の影響は長引きそう」(長尾常務)と判断しているからだ。

富士重工は反動減に加えて新モデル『レヴォーグ』の発売が「当初の5月から6月に後ろ倒しされて色濃く影響」(高橋専務)した結果、33%減の2万7200台に低迷した。また、「増税の影響が想定以上に厳しかったうえ、最量販車であるデミオがモデル末期に当たった」(藤本哲也執行役員)というマツダも、21%減の4万台にとどまった。富士重工の高橋専務は「販売施策を打たないと回復しない。これからが正念場」とし、特別装備車など、何らかの販売てこ入れ策を打つ方針を示唆した。

一方、慎重派のトヨタは今回、『ヴォクシー/ノア』などの新モデルが好調なことから、14年暦年ベースの国内販売計画を年初比で5万台上乗せの155万台(前年比2%減)に上方修正した。市場は弱含みでも、同社としてはしっかり売っていくという構えを取った。夏休み明けの秋の陣は、駆け込み特需などでこれまで比較的静かだった顧客争奪戦が、熱を帯びる展開となりそうだ。

《池原照雄》

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