【インタビュー】FOMM鶴巻代表「水害と渋滞緩和に新たな方向性アピール」…超小型EV、タイで発売へ

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FOMM 鶴巻日出夫代表取締役
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  • FOMM コンセプト One
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FOMMは大同工業、日本特殊陶業と共同開発した超小型電気自動車『FOMM コンセプト One』をバンコクモーターショーに出展する。水上を浮きながら移動できるのが特徴で、FOMMの鶴巻日出夫代表取締役はまず水害が多いタイで2015年から販売したいと語る。

---:水に浮く電気自動車(EV)を考え付いたきっかけからお聞かせください

鶴巻代表(以下:敬称略):ずっとEVをやってきて、EVって本当はもっといろいろな切り口があるのではないかと、ずっと考えていた。ある時、エンジンは酸素がないとだめだけど、モーターは水中で酸素がなくても良いという考えがひらめいて、それを思った時に水に浮いたら面白いのではないかと考えついた。

実家がある静岡県磐田市は海岸から1.2kmしかなく、津波が来ると確実にのまれるところ。両親がそこにいるが、両親は足があまりよくなくて、津波が来たら逃げられないと言っている。そういうことを聞くと、やはりこういう車があれば助かる可能性が少しでも上がるのではないかというのが切実にあった。

---:水中を走る仕組みはどうなっているのでしょうか

鶴巻:ホイールがフィン形状になっている。そこから水を吸い込み、インホイールモーターの周りにある導水板で水を後ろに出て、その推進力で前に進む。インホイールモーターが前にあるのがミソで、ステアリングを切ると、タイヤが切れるので水が出る方向が変わるので曲がっていく。

---:タイで生産、販売することを決めた背景を教えてください

鶴巻:タイなどの新興国でこれから自動車がどんどん普及していく中で、本当にエンジン付きの、排ガスを出す自動車ばかりが増えて良いのかという思いがある。そういう中でこそEVがふさわしいのではないか。その中で超小型モビリティはEVに適していると考えていて、東南アジアにふさわしい。さらにFOMM コンセプト Oneの特殊機能である対水害機能は、タイやインドネシアでの水害に対処できるものと考えている。そのために東南アジアでというのが最初にあった。

---:価格はいくらになるのでしょうか

鶴巻:タイで30万バーツを切りたい。日本円でいうと100万円以下。これを切るようなところを目標に進めていきたいと考えている。バッテリーをそのまま付けて販売するととても切れないが、ルノー『トゥイジー』のようにリースにしてイニシャルコストを下げて、車両価格をなんとか100万円を大きく下回りたいと考えている。

---:ターゲットユーザーはどのように設定していますか

鶴巻:まだGDP自体も低いので、富裕層や中間所得層の上位も含めた人たちのセカンドカーというのが今のターゲット。そういう人たちに乗ってもらえば、これから頑張って仕事をしてお金をためて初めて車を買おうと思っている人達が、それをみて一気に高い車にいくのではなくて、より手の届きやすい、環境に優しいこの車を選んでくれるのではないかと考えている。

---:市場性をどうみていますか

鶴巻:これから本格的なマーケティング活動に入るが、簡易的なアンケートをとったところでは年間7万台くらいは売れる結果になった。ただ母数が少数なので、今回バンコクモーターショーに出展し、そこで1000名くらいのアンケートをとって、本当にそうなのか、例えば100万円を超えてしまった場合は何台なるのか、100万円を下回ったら何台になるのか、そういう分析をして、今後の企画にいかしていきたいと思う。

---:タイの法規上、FOMM コンセプト Oneはどのような車両区分になりますか

鶴巻:タイで、この車が走れるような規格は現在ない。我々は今、欧州の『L7e』という規格をとろうとしている。日本の新ガイドラインに近いもので、昔からしっかり確立されている規格。それをとってタイ政府に走らせてほしいという交渉をこれから行う。タイの老舗の商社や日本の大手商社に間に入って頂いて交渉をしていきたいと考えている。

---:タイ政府の承認を得る上で、一番アピールしたい点は

鶴巻:やはりタイの人たちは水害でかなり苦労していると思う。そういう人たちに具体的なソリューションを提案しているというところをまず訴えたい。それから渋滞も都市部で非常に深刻。そういう中ではこういう専有面積の小さい車、これがEVとして動くことによって、トータルとして地球環境に優しいし、渋滞緩和のひとつの方向性になるのではないかということをアピールしていきたい。

---:日本市場への展開はありますか

鶴巻:FOMM コンセプト Oneは国土交通省が提唱する新ガイドラインの車両サイズに納まるが、4人乗りなのでガイドラインの中には入らない。日本で引き合いがあれば例えば2人乗りにして販売することも全くないことではないと考えている。

ただ、まずはこの車を量産化しないと日本での展開はないと思っている。15年9月に量産化した以降に、例えばリアシートを外すことはそれほど手間がかからないので、もし日本で引き合いがあれば順次展開していければと思っている。

また初年度はタイ単独での販売になるが、インドネシア、マレーシアは同じ右ハンドル国なのでそのまま売れればいいと思っている。さらにL7eを取得するということは、欧州でも売れるので、そうした国々でも売ればと考えている。

---:無事、量産化して新たな市場を切り開くことができた後、FOMMはEVメーカーとして大きなサイズのモデルも造るようになっていくのでしょうか

鶴巻:超小型モビリティに特化したビジネスモデルなので、大きな車を造る考えは全くない。逆にバイクだったり、小型の分野での新しいものをこれからやっていきたい。

《小松哲也》

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