宇都宮市でLRTとまちづくり考えるシンポ…フランスの事例や課題など議論

鉄道 行政

LRT(次世代型路面電車、軽量軌道交通)の導入が計画されている宇都宮市で2月19日、地元のNPO法人主催によるシンポジウム「まちづくりとLRT」が開かれた。フランス・ストラスブールの事例紹介やパネルディスカッションが行われ、交通とまちづくりに関して議論が交わされた。

シンポジウムはNPO法人「宇都宮まちづくり推進機構」が主催し、同市内をはじめ各地から約380人が来場した。基調講演では、フランス・ストラスブールのLRTに関する著書があり、仏の交通とまちづくりに詳しいビジネスコンサルタントのヴァンソン藤井由実さんが「公共交通を導入したまちづくり・ストラスブールの事例」と題し、1994年に世界で初めて全編成が完全低床車のLRTを導入したストラスブールの事情を紹介した。

フランスでは現在28都市がLRTを導入しており、大半は人口約51万人の宇都宮市よりも小規模の自治体という。ストラスブールは人口約48万人で、ヴァンソン藤井さんは人口や都市規模など両都市の類似性を指摘。同市ではLRTの導入で市街地の空間を車から歩行者に取り戻す「都市空間の再配分」を実現し、渋滞や環境問題も解消。イメージの向上で「都市ブランド」の確立に成功したという。

LRTの導入が成功した理由としては「歩いて楽しい街づくり」の実現のほか、バスとの共通乗車券や乗り換えに考慮した乗り場などの「利便性の高さ」、パークアンドライドなどによる「車との共存」、導入と同時に行う周辺整備によって「LRTが走ると街がきれいになる」というイメージの植え付け、そしてLRTを補完する自転車の利便性向上といった数々の施策があったと説明した。

日本でLRT導入計画が進まない理由としては、自治体などがインフラを保有し、民間が運営する「公設民営方式」がまだ根付いていないこと、バスやタクシーなど他の交通機関との整合性を図る「運輸連合」がつくりにくいこと、公共交通は独立採算という意識が強く、税金投入に対するコンセンサスが育っていないことなどを指摘。高齢化社会が進展しているにもかかわらず、車社会からの転換に対する意識が共有されていないことも問題点として挙げた。

後半のパネルディスカッションは、宇都宮大学大学院教授の森本章倫さんをコーディネーターに、ヴァンソン藤井さん、宇都宮市の荒川辰雄副市長、宇都宮美術館主任学芸員の橋本優子さんがパネリストとして発言した。荒川副市長はLRT計画のこれまでと今後を説明。橋本さんは、移動や交通・都市環境のデザインについて、多様さと地域色のある柔軟なシステムであると同時に、次世代など全ての人にとってあらゆる観点から良い「過去・現在・未来」につながる普遍的・持続的なものが望ましいと述べた。

ヴァンソン藤井さんは、ストラスブールのLRT整備は交通利便性を高め、都市間競争に勝ち残る策という面があったと説明し、日本は人口が減少しているからこそ、交通が便利で住みやすい街に人が集まっていくだろうと指摘。森本教授は、路面電車や地下鉄などの都市内交通がある街は人口が減りにくく、逆にこれらの交通がない街では激しい人口減少が起きているとし、何をインフラとして残していくかが次世代に大きな影響を与えるのではないかと述べた。前日に想定路線のルートを視察したというヴァンソン藤井さんの「(運行の)事業主体の立ち上げはどうするのか」との問いに、荒川副市長は民間を含めた公募や、官民による運営主体の新設など幅広い選択肢を用意していると説明した。

宇都宮市のLRT導入は、JR宇都宮駅西側の「桜通り十文字」付近から駅を通り、東側の「宇都宮テクノポリスセンター地区」まで市内を東西に貫く約15kmのルートを検討。市は2014年度予算案に、LRTに関する調査・設計や住民への説明などに向け約10億円を計上している。
《小佐野カゲトシ@RailPlanet》

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