イプシロンロケット試験機打ち上げ 目標を上回る軌道投入精度を報告

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イプシロンロケット試験機打ち上げ 目標を上回る軌道投入精度を報告
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2013年12月24日、文部科学省第13回宇宙開発利用部会が開催された。JAXA 宇宙航空研究開発機構のイプシロンロケットプロジェクトチーム 森田泰弘プロジェクトマネージャは打ち上げ時の軌道投入精度について「ノミナル通りにぴたりと来ました」と報告した。

今年9月14日に打ち上げられた新型固体燃料ロケット「イプシロン」の試験機は、プロジェクト目標の達成度などを評価するプロジェクトの終了審査を行っている。審査は年度内に完了し改めて報告される。取得した飛行データについて、森田プロジェクトマネージャはイプシロン試験機の飛行シーケンスが目標を上回る軌道投入精度を上げたと述べた。近地点高度では要求値が高度950プラスマイナス50キロメートルのところ、結果は954.05キロメートル、遠地点高度では要求値が高度1150プラスマイナス50キロメートルのところ、結果は1156.87キロメートルとなった。軌道傾斜角は28~32度要求のところ結果は29.7度で、いずれも良好な結果であったという。また、振動レベルは規定値の1/10、音響レベルも規定値の1/2と、衛星にとって「乗り心地のよい」打ち上げとなった。

森田プロジェクトマネージャは「固体ロケットの軌道投入はなかなかぴたりとは来なかったもので、M-Vの時代には打ち上げから一周して衛星が内之浦の上空に来にあたって、ノミナルの方向だけでなくオフノミナルの方向にアンテナを向けて補足するための対策集を50ページほど作って備えていた。今回も想定集を準備したが、それがまったく必要なく、ノミナル通りにぴたりと来たので衛星屋さんも喜んでいます」とコメントした。

質疑応答では、宇宙開発利用部会の委員からイプシロン試験機の今後の海外への展開など、利用拡大についての質問が出された。森田プロジェクトマネージャは、打ち上げ能力を向上させる高度化を進め、試験機のみに必要な試験装置などのコストを取り除いた運用段階での実コストを算出し、性能とコストのバランスを最適化するとした。その上で、「乗り心地」や「打ち上げ直前まで衛星へアクセス可能」といった利便性をアピールし、付加価値の高いロケットを提示していくとした。搭載する衛星にも共通化をはかり、ロケット・衛星一体で宇宙でのミッションを達成しやすい「スペースビークル」実現を目指すという。

《秋山 文野》

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