【池原照雄の単眼複眼】ホンダ、ダウンサイジングターボを一気に3機種

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2リットルターボ搭載のシビックタイプR(試作車)
  • 2リットルターボ搭載のシビックタイプR(試作車)
  • 2リットルの「VTEC TURBO」エンジン
  • 2リットルターボ搭載のシビックタイプR試作車
  • 1リットルターボ搭載の欧州シビック試作車
  • 本田技術研究所 山本芳春社長
  • 2リットルターボ搭載のシビックタイプR(試作車)
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1~2リットルエンジンで広範にカバー

ホンダは11月19日にターボチャージャーを搭載したエンジン3タイプの開発を発表した。2015年から『シビックタイプR』への搭載を皮切りに順次、市場投入する。ターボで動力性能と燃費性能を引上げ、小排気量のエンジンで高性能を確保する「ダウンサイジングターボ」技術となる。欧州メーカーが先行する分野だが、ホンダは一気に3機種を開発し、追い上げを図る。

開発中のターボエンジン「VTEC TURBO」は1.0、1.5、2.0リットルの3タイプで、いずれも可変動弁機構を採用した直噴式。1.5リットルはフィットに搭載しているエンジンをベースとし、シリンダ径などはそのままにターボエンジンに改良した。また、1.0リットルはそのエンジンを3気筒に変更したもの。さらに2.0リットルはオデッセイ用の2.4リットルエンジンの骨格を基に開発したという。それぞれの最大出力およびトルク(一部開発目標値)は次のとおりだ。

1.0リットル=出力95kw、トルク200Nm
1.5リットル=出力150kw、トルク260Nm
2.0リットル=出力206kw以上、トルク400Nm

数字の羅列だけではピンと来ないが、それぞれクラストップレベルの出力性能と環境性能を両立させるという。たとえば1.5リットルのエンジンは、自然吸気のガソリンエンジンで1.8~2.4リットル級からのダウンサイジングを想定しているという。シビックタイプRに搭載する2.0リットルはV型6気筒級よりもトルクは10%以上大きくできるそうだ。

1リットルでもトルクフルで俊敏

これらの試作ターボエンジン搭載車に、ホンダの栃木研究所の高速テストコースで試乗する機会があったが、1980年代のターボ車のイメージを引きずる者には、圧倒される感触だった。3つのエンジンは、いずれも欧米向けシビック級の車両に搭載している。このため3気筒1.0リットルのエンジンには荷が重いだろうという先入観があったものの、とんでもない思い違いだった。3タイプのエンジンでは一番小さいが故に、トルクフルで俊敏な加速に強烈な印象が残ったのだ。

開発を担当する本田技術研究所の研究員によると、この最小タイプでも「Cセグメント」つまり2リットル級の車両に対応できるそうだ。これらのターボエンジンの出力やトルク性能を高められるのは、直噴技術によるノッキング(異常燃焼)の抑制制御が可能になり、エンジンの低回転域から過給ができるようになったからだという。

山本研究所社長、世界全地域で闘える態勢に

ホンダは2008年のリーマン・ショック後、先進諸国市場の成熟化や新興諸国の台頭、さらに環境規制などを踏まえ、パワートレインの再構築に取り組んできた。ここ2年で伝統的なガソリンエンジンの性能向上のほか、アコードやフィットに採用した新方式のHV(ハイブリッド車)システムやプラグインHVシステム、さらに新ディーゼルエンジンなどが商品化段階に入っている。

今回ターボエンジンを加える狙いについて、本田技術研究所の山本芳春社長は「HVなどそれぞれの技術はまだ普及に地域差がある。とくに新興国についてはディーゼルに加え、ダウンサイジングターボが必要となる。これでほぼ世界全地域で闘える態勢ができる」と説明した。ちなみに軽自動車以外のホンダ車へのガソリンターボ搭載は、国内の場合、1991年の『レジェンド』を最後に途絶えている。

日本メーカーではトヨタ自動車も20日からの東京モーターショーに、レクサスのコンパクトSUV『LF-NX』に2リットルのターボエンジンを搭載したコンセプトを出品する。レクサスでは初採用となる。後手に回った日本メーカーがダウンサイジングターボをどう位置付けていくのか、これからの注目点だ。

《池原照雄》

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