JAXA、ソニックブーム低減技術研究のため、研究用機体の落下試験を今夏実施

航空 テクノロジー
D-SENDプロジェクトチームの吉田憲司マネージャー(右)と、本田雅久サブマネージャー(左)
  • D-SENDプロジェクトチームの吉田憲司マネージャー(右)と、本田雅久サブマネージャー(左)
  • 100人乗りだったコンコルドよりも規模の小さな超音速機の開発を目指している。
  • 投下する機体の全長は約8m、重量は1トン。
  • 高度30kmの地点から投下し、約50度の角度でダイブさせると、落下中にマッハ1.3へ達する。この際に飛行船から吊るしたマイクで測定する。
  • 機体の先端と後端で時間差で発生する衝撃波が、地上において2度の急激な圧力上昇を引き起こす。これが激しい騒音の元になる。これを機体形状によって軽減することが試験の狙い。

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、次世代超音速機開発のキーとなる「ソニックブーム低減技術」を研究しているが、これを実証するために今年の夏、スウェーデン国内の実験場で研究用機体の落下試験を行うことを明らかにした。

これは「D-SENDプロジェクト」と呼ばれているもので、D-SENDとは「Drop test for Simplified Evaluation of Non-symmetrically Distributed sonic boom」の略となる。

航空機が超音速で飛行する際には、胴体や翼、エンジンなどの機体各部から衝撃波(ソニックブーム)が発生し、これが地上に到達すると凄まじい爆音となる。かつて存在した超音速旅客機の「コンコルド」はこの衝撃波が問題となり、超音速での飛行は洋上に限られるなどの制限があったが、D-SENDプロジェクトではこの衝撃波を軽減し、陸上でも超音速飛行が可能な50人乗り規模の機体開発を目指している。

2011年には「D-SEND #1」と称した試験体の落下試験を実施。低ソニックブーム設計形状の有効性を確認したため、今年は「D-SEND #2」と称し、実際の機体に近い形状の試験機を使い、落下試験を実施することになった。

試験機体は気球を使って上昇。高度30kmで切り離し、約50度の角度でダイブさせることによってマッハ1.3の速度を出し、この際に発生するソニックブームを計測するという。

試験用機体は今月末に報道向けに公開され、その後はスウェーデンの実験場に輸送。7月下旬から8月下旬の約1か月間に気象条件の成立を待ち、試験を実施する。機体は最終的に墜落して大破するため、回収は実施されないという。

《石田真一》

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