【インタビュー】三菱 アウトランダーPHEV、大容量は航続距離と瞬発力に効く

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三菱自動車商品戦略本部プロジェクトマネージャー服部光善氏
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  • 三菱 アウトランダー PHEV
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三菱自動車が発売した『アウトランダーPHEV』。EVを強調するエンブレムが示す通り、EV技術をベースとするプラグインハイブリッド車となる。

システムは、バッテリー、前後2つのモーターを配置するツインモーターAWD、主に発電を担当するエンジンと、シンプルな構成。エンジンは、高速でのパラレル走行で駆動力を伝え、中低速領域では駆動系から切り離され発電機を回すために存在する。ほぼシリーズハイブリッドとしての性格をもつシステムとなる。

千葉県にある日本自動車大学校のクローズドコースでの試乗の後、アウトランダーPHEVの開発をまとめた、三菱自動車商品戦略本部のプロジェクトマネージャー服部光善氏に話を聞いた。

---:電池のみで走行するEVモードに対するハイブリッドモードには2種類あり、シリーズモードはエンジンを発電機として使い、パラレルモードはエンジンもモーターも車軸に対して動力になるとの説明がありました。しかし今回走ったクローズドコースの領域では、ほぼシリーズ走行しか試せませんでしたし、8割、9割はEV走行でした。電池残量が1メモリになってもEVモードが粘ります。少し乗っただけですが印象では900kmの航続距離を実現したEVが出来上がったと感じました。

服部氏(以下敬称略):はい。そのような車をつくりたいと考えました。

---:外部充電によるEV走行の航続距離は60.2kmですが、航続距離やバッテリーの容量を決定した要因は何でしたか。i-MiEVは10kwhと16whのモデルがありますがアウトランダーPHEVは12kwhです。バッテリーの容量を減らして車両価格と車両重量を抑え、ハイブリッド車に近いプラグインハイブリッドにする選択をしなかった理由は。

服部:近距離走行を想定した小型プラグインハイブリッドならばそういう選択肢もあったかもしれません。しかし我々はSUVとしての車の利用シーンも想定しました。そこではEV走行距離をなるべく伸ばすことが、中長距離を走行した時のガソリン消費量を減らすことに効いてきます。そのために電池容量はなるべく大きくしたいと考えていました。ただ、重量増やコスト増をどこまでで抑えるのか、トータルの性能としてまとめるのは苦労したところです。

例えば、SUVとしてのEV走行距離がどれくらい必要なのかを考えるとき、どこかに遊びに行こうと、東京を中心にすると伊豆までは往復で200kmぐらい、現地での移動も考えると300kmぐらいの移動距離がありますが、EV走行の航続距離60.2kmを用意することで往路の大半をカバーすることができます。

それだけでも、かなりトータル走行距離でのガソリン消費を減らすことになりますが、急速充電にも対応させることで現地または復路で充電してしまえば帰りの部分でもEV走行距離が伸び、300kmの移動距離があってもグッとガソリンの消費を減らすことができるのです。

また、電池容量を減らすと単純にEV走行距離が減るだけではなく、出力も変わってしまいます。出力が制限され、モーター走行でSUVサイズの車を気持ちよく加速させることができなくなります。トータルバランスとしての影響も考えなければなりませんでした。

---:私が所有するプラグインハイブリッド車でも、1kmあたりの電気代とガソリン代の差を考えると、EV走行領域が広がれば広がるほどお財布に優しいことを実感しています。電池性能に容量影響しているのは試乗していても感じることができました。バッテリーの性能というのは、言うなればエンジンパワーみたいなものなのですね。

服部:まさにそうですね。エネルギー密度という考え方になるかと思いますが、大容量は航続距離と同時に、瞬発的に出せる出力も大きくなります。

---:大容量の電池は抵抗が少なく、運動エネルギーの回生も効率的に回収できるようになったということでしょうか。

服部:そうですね。前後2つのモーターと大容量の電池を組み合わせることで、SUVが発生する大きな運動エネルギーを効率的に回生することにも役立っています。2モーターは駆動時だけでなく制動時のエネルギー回生にも意味がある選択なのです。

---:なるほど。パドルシフトの要領で回生レベルを6段階にコントロールできるスイッチを付けようと思ったのは。

服部:例えば、山道にあるようなつづら折りの道では、ブレーキを踏むよりもエンジンブレーキ的に回生ブレーキを使ったほうが運転をしやすいのではないかと考えました。実際に、回生ブレーキの利き方をコントロールして、アクセル操作だけでコーナリングするのは気持ちがいいものです。

また、一定速度でクルージングするような時には、回生レベルをゼロにするいわゆる滑空状態とすることで、一定の速度で効率的に走れるようになります。回生を使わないことで電気の出し入れで発生するロスもなくなります。EV走行における“電費”に加えトータルの燃費を伸ばすことにもつながります。

---:ハイブリッド車の世界でも、走行抵抗がかからない回生ゼロ状態を上手く使うことで、燃費を伸ばそうという方向に変わってきていますよね。

服部:そういった運転テクニックに関わる部分も、将来的には燃費が良くなる走り方というのをユーザーの方に提供していけたらと考えています。

---:ハイブリッド時代からEV時代に移行しようと、周辺のテクノロジーやサプライヤーの進化も確実にあって、バッテリーの性能でパワートレインのポテンシャルも決まる。今回の試乗では、そういった印象を受けました。

(インタビュアー:三浦和也)

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