ホンダが昨年の東京モーターショーで披露した3人乗りの超小型EVコミューターコンセプト。先般、マスメディアやジャーナリスト向けの技術見学会「ホンダミーティング2012」において、より完成度を高めた「マイクロコミュータープロトタイプ」の試乗会が行われた。

試作車の寸法は全長2.5m、全幅1.25mという、軽自動車を大幅に下回るマイクロサイズ。前席は大人1人ぶん、後席は子供の乗車を想定した小型サイズ2個を並べるというパッケージングだ。原動機は15kWの電気モーターで、バッテリーはリチウムイオン電池。EVは技術的には超小型車向きだがコストが高すぎ、現状では非現実的だ。

ホンダ関係者は「何とかして50万円、60万円といった値段に持って行きたいし、そうでなければ売れない」と、EVパッケージでの市販化にあたっては大幅なコストダウンの必要性に言及する。本当にその価格が実現できるようになれば、超小型車をガソリンエンジンで作る必要性は薄まる。それまではエンジン車が主力となることだろう。

試乗車の運転席に乗り込む。通常のクルマでは右または左に寄って着座するのに対し、マイクロコミュータープロトタイプの場合はセンターに座る。フロントウインドウシールド越しのビューは一人乗りのカートに似たもので、なかなか新鮮であった。ダッシュボードにはタブレットPCを装着するスペースが設けられており、固定式の計器類はない。速度、航続距離残などの車両情報はすべてPCのディスプレイ表示される。

走り始めてまず印象的なのは、走行フィールが普通のクルマとかなり異なるものであること。ステアリングは遊びがごく少なく、ハンドルを切るとダイレクトにグリッと旋回する感覚だ。ステアリングはパワーアシストなしだが、タイヤが細いため操舵の重さは感じない。

超小型車で気になるポイントのひとつに操縦安定性がある。車幅が狭く、全長も短いため、一般のクルマに比べてスタビリティや横転耐性などでは確実に不利と思われる体。が、マイクロコミュータープロトタイプは少なくとも一般道の速度レンジ内では、そういった不安定さや不安感はほぼゼロだった。

最高速度80km/h程度を想定しているという動力性能も、実用上不足を感じるような場面は少ないと思われた。主機の電気モーターの最大出力は15kW(約20馬力)と小さいが、車両重量が400kg未満と軽量なため、キュンキュンと加速する。加速感とスロットル開度の相関性はかなりダイレクトで、独特のドライビングプレジャーを感じさせるもの。あえていえば、超パワフルな電動カートといったところか。

今日、日本では国交省主導で、125ccエンジンもしくはそれに相当する電気モーターを搭載した超小型車の制度設計が行われている真っ最中だ。が、一部の業界関係者や超小型車のニーズが特に高い地方自治体から漏れ聞こえてくる情報によれば、ドアは常時開放式、原動機出力もごく小さいものに限定するといった、商品力を故意に落とすような“自主規制”が強要される可能性もある。

超小型車の制定は、軽自動車の税額アップとワンセットで検討されている。超小型車が便利で税金も安いとなると、悲願であった軽自動車の税額アップを果たしても長距離走行を必要としないユーザーが超小型車に流れ、結局税収増にならない可能性があるからだ。第3のビールに客が流れないよう、わざと不味いものを作らせるようなひどい話で、そうならないよう国民が制度設計に目を光らせる必要があろう。

ホンダのマイクロコミュータープロトタイプは、いまだ流動的な国内の将来規制はとりあえず念頭に置かず、欧州の「L7」シティコミューターカテゴリーに適合するなど、グローバル市場を見据えた仕様となっている。

軽自動車が税額アップ、超小型車が日本のガラパゴス仕様になれば、軽自動車の販売台数は税額が近づいたコンパクトカーと維持費の安い超小型車に食われて激減し、超小型車もしょせん国内市場というコップの中での販売にとどまることになり、EVにせよエンジン車にせよコストが下がらないという状況に陥る恐れがある。

超小型車の制度設計が少しでもユーザー、メーカーにとってメリットのある、良い方に向かってほしい。ドア付きでパワーもあるホンダのマイクロコミュータープロトタイプに乗ってみて、あらためてそう感じた次第だった。
《井元康一郎》