【GARMIN nuvi 2790V インプレ前編】「スマートフォンにできないこと」を追求したPND

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【GARMIN nuvi 2790V インプレ前編】「スマートフォンにできないこと」を追求したPND
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  • 比較対象物がないと7インチモデルだということに気づかないほど、形状、デザインに変更はない。最近のnuviシリーズはベゼルがガンメタで艶のない仕上げが多かったが、本機は艶のあるブラック仕上げになっている。
  • 裏面はスピーカーとワンセグの外部アンテナ端子。中央の長方形はスタンド。その上の横長のへこみはクレードルに固定するためのものだ
  • 上面には唯一のハードウエアボタンである電源スイッチとワンセグのアンテナがある。これまでのnuviシリーズは電源スイッチが左、アンテナが右だったが、本機は逆の配置になった。
  • 下面はクレードルとの接点があるのみ。従来のnuviシリーズはここにUSB端子があったが、側面に移された。
  • 右側面にはMicroSDカードスロットとUSB端子がある。これまで下面にあったUSB端子が側面に移動したおかげで、電源ケーブルをつないだままで立てて置くことが可能になった。
  • スタンドを使って立てて置いたところ。スタンドは2段階のノッチがあり、立てる角度を調整できる。
  • ロッドアンテナは従来のnuviシリーズと同じ者のようだ。本体サイズに比例して長くして感度アップを狙って欲しかったが、やや残念。

世界的にはPNDの代名詞であり、日本でも存在感を増しているGARMINのPND「nuviシリーズ」。かつてはコンパクトでシンプルであることが身上だったが、並み居るライバルやスマートフォンの普及に対抗するため、ここまで大きく(外見だけでなく、中身の充実度も)成長した。

◆明確な意志が感じられるnuviシリーズの方向性

写真を見て「アレッ」と思った人も多いかもしれない。見慣れたnuviシリーズの外観はまったく変りないのだが、妙に大きい。いや、「妙に」どころではない。このnuvi2790VはWVGAの7インチディスプレイを搭載しているのだ。今までのnuviシリーズの主力モデルは4.3〜5インチ前後がほとんど。つまり、一気に2インチも大きくなったことになる。ライバルとなる他社のカーナビを含めて考えても、ポータブルタイプのナビで7インチは最大クラスといっていいだろう。

当たり前だが、本機は従来のnuviシリーズをただ大きくしただけの製品ではない。主な特徴を見ると、FMトランスミッター搭載、FM-VICS対応、ワンセグチューナー搭載、バックカメラやドライブレコーダーを追加可能などとなっている。これらはすべてスマートフォンが搭載していない、あるいは搭載モデルが少ない機能だ。つまり、本機は車両との一体化を推し進めて拡張性を高め、「スマートフォンにできないことをやる」というコンセプトを明確に打ち出しているといえるだろう。

一時は家電量販店で大きなコーナーが作られるなど大ブームとなったPNDだが、現在は低価格化競争とスマートフォンに押されて苦しい状況にあり、ソニーも先頃撤退を表明した。そんな中で、GARMINは意欲的な新機能を搭載した新製品を次々とリリースしている。その新製品群のひとつが、このnuvi2790Vだ。

◆サイズ以外ではスタンドが追加されたのが外観上の唯一の違い

GARMINのnuviシリーズといえば、かつてはYシャツの胸ポケットに入るコンパクトさ、ハードウエアスイッチがひとつしかないシンプルさ、明快な操作の分かりやすさがその特徴だった。GPSによる位置測定という、PNDにとってコアとなる技術に絶対的な自信をもつGARMINだからこそ、ライバルとは一線を画すこうしたコンセプトを大胆に推し進めることができたのだ。

アウトドアスポーツや登山で使うGPSデバイスで圧倒的なシェアを持つGARMINはGPSについて圧倒的なノウハウを持っているし、そんな背景からほかのカーナビメーカーとは微妙に異なるユーザー層をつかんでいる。地図ソフトをインストールすれば海外でも使えるとか、登録地点を自在に操れるカスタムPOIといったマニアックな機能も人気をあつめ、日本でも一定のユーザーの支持を得ることに成功した。

今回取り上げるnuvi2790Vは前述のとおり数々の新機能を搭載しているが、その一方で従来からのGARMINらしさをどのように残し、生かしているかが気になるところだ。まずはそのアウトラインからチェックしていこう。

本体サイズは幅188mm・高さ11.2mm・厚さ16mmと、7インチディスプレイに合わせてかなり巨大になった。従来の5インチモデルが幅137ミリ、高さ83ミリだったから、一回りどころではない違いがある。重量も360gと、従来モデルの2倍ちかくになった。

樹脂素材の塊から削りだして作ったような質感は従来通りだが、さすがに今までのような手軽さで取り扱うことはできない。今までのnuviシリーズではまったく感じなかったことだが、本機を取り扱った時には、キャリングケースのようなものを付属して欲しいと思った。

本体に電源スイッチひとつしかボタン類を装備しないシンプルさは継承。その他の部分も、従来モデルをそのまま大きくした、という印象だ。ただし、本体を机に立てておけるスタンドが背面に追加された。おかげで、自宅でテレビとして使うときにもたれかけさせるマグカップを用意する必要がなくなった。

ディスプレイは800×480画素(WVGA)のTFT。最上位機種の『nuvi3770V』を除く5インチの従来モデルは480×272(WQVGA)だったから、表示できる情報量は3倍近くになった。表示面積は3倍までは増えていないので、つまりドットピッチが詰まったということ。計算してみると5インチモデルのドットピッチが0.23ミリなのに対して、本機は0.191となっている。実際、画面をぱっと見た瞬間に分かるほど、高精細になった印象を受ける。地図の見やすさに特化したコントラストの強い画質はこれまで通りだ。

内蔵するメモリは8GB、バッテリーの駆動時間は約2時間となっている。日本独自の準天頂衛星みちびきに対応して精度を高めたGPSやBluetooth搭載、ワンセグ対応といった機能は従来通りだ。なお、本機には「nuvi2790V」と「nuvi2790」という2つの製品があるが、Vがつく方にはFM-VICS受信セットが付属、つかない方は別売りオプションという違い。ワンセグチューナーの有無ではないので注意したい。

◆吸盤マウントにゲル素材を採用

ここからは使ってみながらレポートしよう。まず最初に車両への取り付け。見慣れた吸盤タイプのマウントは、まず付属の丸いプレートをダッシュボードに両面テープで接着してから、そのプレートに吸盤マウントを取り付ける、と思いきや、違っていた。なにが違うかというと、吸盤の素材が違うのだ。他メーカーのほとんどが採用しているゲル状のネバネバした素材に変更されている。

と言うことは、と思い、ダッシュボードに直接取り付けてみたところ、見事にガッチリと固定できた。ゲルの厚みがやや少なめに見えたので心配もあったが、そのまま1週間使用しても剥がれる気配は全くなく、吸着力は十分なようだ。ダッシュボードの素材やシボの深さによって相性はあるだろうが、ライバルのゲル吸盤と同等の実力があると見てよさそうだ。

これでファーストカーからセカンドカーへの移動、あるいはレンタカーでの利用も簡単になった。ただし、説明書にはこの吸盤について、ダッシュボードに直接取り付けてはいけない、頻繁に脱着してはいけないとの記載がある。従って、上記のような利用方法は自己責任ということになる。それでもユーザーとしては非常に嬉しい改良であることに変わりはない。

ところが、クレードルにPND本体を取り付けようとしたところで、その嬉しい気分が少しだけ冷めることになった。というのもクレードルへの本機の固定がどうもやりにくいのだ。これまでのnuviシリーズは片手で小気味良く脱着できるのが美点のひとつだったが、本機ではまったく勝手が違う。クレードルにはバネで動くツメが内蔵されており、下部のレバーを押し上げるとツメが移動するようになっている。ところが、このバネがとんでもなく硬い。そのため取り付けも取り外しも片手では絶対に不可能。両手を使い、エイッと力を込めないと脱着できない。本機が従来のモデルより重いため脱落防止という目的があるのかもしれないが、もう少し軽く取り外しができれば嬉しい。

《山田正昭》

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