【シトロエン DS5 試乗】らしさと、らしくない部分と…松下宏

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シトロエンDS5
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デザインに特化したシトロエンのDSシリーズの中でも、『DS5』は際立ってオリジナリティにあふれた内外装のデザインを採用する。ほかのどのクルマにも似ていないのはとても良いことだ。

ステーションワゴンとハッチバックの中間的な感覚のボディは、全長が『C5』より短く、全幅はC5よりやや広い。外観デザインでは、拡大されたフロントフェンダーに配置されたサーベルと呼ぶメッキモールが特に印象的。ほかにも内外装のいろいろな部分が個性にあふれている。

インテリアも独特の形状のインパネを始め、飛行機のコクピットを思わせるかのようにルーフにまで配置されたトグルスイッチ、腕時計のベルトを連想させる本革シート表皮のデザイン、アナログ時計などなど、DS5ならでは個性が表現される。

これくらい主張の強いデザインだと、好き嫌いが分かれることも予想されるが、シトロエンのようにニッチなブランドの、それもデザインに特化したモデルでは、デザイン的な主張は強ければ強いほど良い。

全長がさほど長くないため、室内空間はそれほど広くはない。前席はともかく、後席の足元空間やラゲッジスペースはほどほどといった感じだ。ただ、ラゲッジスペースはシートアレンジによって積載量を増やせるから、ワゴンとして使うにも不満はない。

全幅が拡大されたものの、最小回転半径はC5よりやや小さくなって5.7m。決して小さな数字ではなくてまだまだ大きいが、C5よりも良いのは確かだ。

搭載エンジンは直列4気筒1.6リッターの直噴ターボ。BMWと共同開発したプジョー・シトロエングループの主力ガソリンエンジンで、これまでに多くのモデルに搭載されている。115kW/240N・mのパワー&トルクを発生し、そのトルク感のある走りは定評を得ている。

吹け上がりは今どきのターボ車らしくラグのない滑らかなもので、低速域での十分なトルクがスムーズなエンジン回転の上昇に合わせて更に盛り上がっていく。組み合わされるアイシンAW製の電子制御6速ATもとても滑らかな変速フィールである。

乗り心地はC5に比べるとやや硬めでしっかりした印象。C5にはシトロエン独自の油圧式サスペンション(ハイドラクティブIIIプラス)が採用され、独特の快適な乗り心地を実現しているが、DS5には採用されていない。それが乗り心地の違いにつながっている。個人的にC5に乗っているので、DS5の乗り心地にはやや不満を感じた。

装着タイヤは17インチのプライマシーHPで、これによって乗り心地の良さも確保されているものの、段差を超えるときのショックなどは油圧式サスペンションには及ばない。ステアリングの操舵(そうだ)感はそこそこ手ごたえがあるものの、全体に軽めの味付けとされている。

DS5に油圧式サスが採用されないのは、基本プラットホームがC5と同じものではなく、C4と同じものだからだ。ホイールベースや全長が短いこともそれによる。

このほか、ステアリングホイールが普通に回転し、センターが固定されるタイプではないことなどもC5との違いで、シトロエンらしい独創的なクルマであると同時に、これまでのシトロエンとは違う部分も持つのがDS5というクルマである。

価格は445万円の設定で、このクラスの輸入車の売れ筋モデルが多く存在する価格帯の中心にある。カーナビは約20万円のオプション設定だが、それなりに値ごろ感のある設定だ。デザインが気に入ったシトロエン好きのユーザーには絶好である。

松下宏|自動車評論家
1951年群馬県前橋市生まれ。自動車業界誌記者、クルマ雑誌編集者を経てフリーランサーに。税金、保険、諸費用など、クルマとお金に関係する経済的な話に強いことで知られる。ほぼ毎日、ネット上に日記を執筆中。

《松下宏》

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