かつて三菱を代表するコンパクトカーとして人気を博した『ミラージュ』が、昨年の東京モーターショーで装い新たに“復活”を遂げた。
コロンとした愛嬌あるスタイリングは反響が大きかったようで、発売を心待ちにしているファンは多い。
ところがミラージュは今回から、生産地をタイに移し、発売もタイが先行するという。3月末に行われたバンコクモーターショーで、特設コースにて試乗するチャンスがあると聞き、出かけて行った。
まずショー会場内の三菱ブースでは、8色そろうカラフルなボディカラーをアピールするように、かなりのスペースを割いてミラージュをディスプレイ。
タイの女性ユーザーにもウケは上々のようで、5つあるグレードのうちベーシックの「GL」は38万バーツと、タイで買える最もリーズナブルなクルマのひとつに入るため、初めて愛車を購入する層や若年層にも注目されている。
安価とはいえ実際に触れてみると、インパネなどの造りは価格相応ではあるが納得のいくレベルだし、シートの座り心地も適度な弾力でなかなか快適。ドリンクホルダーや小物収納、USBジャックなどの装備も十分にそろう。
室内の広さとしては、頭上と足元のゆとりはスズキ『スイフト』と同じぐらいの感覚だ。ラゲッジは深さと横幅がしっかりあり、シートをフラットにもできる。広報氏いわく「弊社のコルトより荷物が入ります」とのことだった。
試乗車のパワートレインは1.2リットル3気筒ガソリン+CVTで、タイヤは14インチ。
試乗コースは短いながらも直線、スラローム、レーンチェンジが体験できたが、まず直線では予想以上に力強い発進に感心した。
車重が約850kgと軽自動車並みに軽いことや、タイではコンパクトカーでも3〜4人乗車が当たり前だということから、加速力にはこだわったという。
またスラロームではストロークが深めの沈み込みを見せながらも、最後はガシッと押さえて体勢を保つ。乗り心地とドライバーの安心感が、ちょうどいいところでバランスしている感じだ。
全体的に、超俊敏というほどではないけど骨太でキビキビと走れる。そんな好印象を受けた。視界が広く、車両感覚がつかみやすいので、車庫入れなどもスムーズだ。
日本仕様はエンジンが1.0リットルになり、アイドリングストップ機構やエネルギー回生システムといったエコ機能が搭載され、CVTの制御もタイ仕様より細かな制御が入る予定。
また安全基準は厳格な欧州基準を満たし、燃費はタイ仕様で22.0km/リットルだが、日本仕様では30.0km/リットル達成を目指すという。
あとはタイヤがどうなるかといったところだが、夏頃に日本で発売されるという新生ミラージュは、十分に期待してよさそうだ。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★
まるも亜希子/カーライフ・ジャーナリスト
映画声優、自動車雑誌『ティーポ(Tipo )』編集者を経て、カーライフ・ジャーナリストとして独立。現在は雑誌・ウェブサイト・ラジオ・トークショーなどに出演・寄稿する他、セーフティ&エコドライブのインストラクターも務める。04年・05年にはサハラ砂漠ラリーに参戦、完走。日本カー・オブ・ザ・イヤー(2005-2012等)選考委員、AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。公式ブログ『運転席DEナマトーク!』他アップ中。