A380はもう古い? 2050年の空の旅 |
仏エアバス社は2011年6月14日、同月下旬に開催されるパリ航空ショーに先がけて、未来の旅客機を想定した「コンセプト・キャビン」をイラストレーションで公開した。
「2050年のエアバス」のボディは、鳥の骨からヒントを得た軽量・強靭なバイオニック(生体工学的)構造をもつ。そこに断熱性能の高いハイテク透明素材を貼ることにより、パノラミックビューを実現する。パノラミックルーフのキャビンは「バイタライジング(活力)ゾーン」と名づけられ、乗客が青空や夜空を眺めながらリラックスする空間として用いられる。
また「インタラクテブ・ゾーン」と名づけられた空間では、バーチャル・ゴルフゲームに興じたり、ヴァーチャル試着室のショッピングを楽しめる。さらに、「スマートテック・ゾーン」では、乗客の体型に合わせて柔軟に形状が変化するモーフィングシートに座りながら、ホログラフィック・ディスプレイを操作することが可能だ。エアバス社は、これらを燃費低減、排気の抑制、騒音低減等とともに実現するという。
エアバス社はそう触れていないものの、この「コンセプト・キャビン」に携わったエンジニアやデザイナーたちは、明らかに客船を頭に思い描いていたに違いない。それも太陽が燦燦と降り注ぐ地中海のクルーズ船である。休暇も少なく、素っ気ない社宅とビジネスライクな研究所の間を往復しているだけのエンジニアには到底できない発想といえまいか。
もちろんこれは航空ショーのためのショーケースであり、エアバスも言及しているとおり、実際には個々の技術が少しずつ製品に活かされてゆくことになる。だが、ちょっと昔のアニメーションを超えるようなシーンをここまで次々見せられると、逆に自動車の限界を思い知らされるようで辛くなってしまうのは筆者だけだろうか。
大矢アキオの欧州通信『ヴェローチェ!』 |