【池原照雄の単眼複眼】相互補完も可能なトヨタとホンダのスマートグリッド

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23日、ホンダとさいたま市はスマートホームの実証実験を共同実施することで合意。伊東社長(向かって左)と清水市長
  • 23日、ホンダとさいたま市はスマートホームの実証実験を共同実施することで合意。伊東社長(向かって左)と清水市長
  • ホンダのコージェネレーションシステムを核とした「スマートホーム」のイメージ
  • ホンダ・スマートホーム
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スマートセンターVS.スマートホーム

ホンダが自社製の太陽光発電システムやコージェネレーション(熱電併給)ユニット、電動車両などを組み合わせた「スマートホーム」を構築し、来春からさいたま市で実証実験を行うことになった。同様の概念による住宅は、トヨタ自動車が「スマートセンター」として開発し、2010年9月から青森県六ケ所村で、外部電源との連携も含めた実証実験に乗り出している。

いずれも、地域での電力消費を効率的にする将来のスマートグリッド(次世代送電網)時代に対応可能な技術となる。こうした家庭=住宅のエネルギー消費も包括した省エネ・低炭素型のシステムづくりは、世界の自動車業界でも両社が先行する。両社はライバル関係にあるものの、住宅、太陽光発電といったクルマ以外の製品では補完も可能であり、今後の展開に注目したい。

ホンダの実証実験は、電気自動車(EV)の普及策を推進中のさいたま市と共同で行うもので、「スマートホーム」は同市内に2~3棟建設する計画。同ホームは、ホンダが市販中の太陽光発電システムとコージェネユニットのほか、外部調達する蓄電池を備える。

◆EVから直流200Vを取り込むコンセント

外部電力を含むエネルギーの制御は「スマートeミックスマネジャー」というコントロールユニットで行う。トヨタのスマートセンターにおけるHEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)に相当する。

大きさは家庭用エアコンの室内機程度であり、住宅の外壁に設置される。ユニットにはEVやプラグインハイブリッド車(PHV)の充電用として100Vと200Vの出力コンセント、停電など非常時に使う100Vの同コンセント、さらに車両側から直流200Vの電力を取り込む入力コンセントが設置されている。電力を車両との間で入出力できるキーステーションとするのだ。

スマートホームに設置されるコージェネは、都市ガスのほか非常時にはプロパンガスも使え、出力は1kW。太陽光発電の能力を4kW程度とすれば、一般家庭のピーク電力に対応できる。

ただし、夜間は太陽光発電ができないので蓄電池や電力会社からの受電が必要だ。それでも、昼間の太陽光発電による電力会社への売電により、売買電のエネルギー量をほぼ均等化させることも可能だろう。伊東孝紳社長は「家庭単位で自立した電力供給の可能性を検証したい」と期待を寄せる。

◆トヨタホームにホンダの太陽光発電を乗せる

トヨタの六ケ所村での実験が、一定地域でのスマートコミュニティとしての取り組みとなっているのに対し、ホンダの実験はまず家屋単位のスタンドアローン型から始める。ホンダはこの実験で、車両からの排出を含む家庭でのCO2(二酸化炭素)排出量を、15年までに00年比で半減させることを目標にしている。

両社の実験の構成ユニットでは、それぞれ自社製品にあるものと、ないものがある。住宅と太陽光発電である。スマートグリッド分野での技術開発を共に加速するため、補完し合うのも検討に値するのではないか。

トヨタはトヨタホームにホンダの太陽光発電を乗せ、ホンダはトヨタホームでスマートホームを構築する―これぞ「競争と協調」である。

《池原照雄》

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