【池原照雄の単眼複眼】快走するアシスト自転車、ホンダも再参入へ

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8年ぶりの全面改良で元祖ヤマハが攻勢

電動アシスト自転車の売れ行きが好調に推移している。元祖メーカーであるヤマハ発動機によると、2010年の国内市場規模は前年を8%上回る39万台規模となった。同社は今年も堅調に推移し、40万台突破は確実と見る。

関係者によるとバイクでは世界最大手のホンダも、この分野に再参入の準備を進めており、一段と市場の活性化が進みそうだ。

1993年に世界に先駆けて電動アシスト自転車を“発明”したヤマハは、これまで累計100万台の販売実績をもつ。同社の『PAS』シリーズは今月8年ぶりの全面改良を行い、27日から順次発売する。新モデルはバッテリーに耐久性能を高めたリチウムイオン電池を搭載し、その寿命は旧モデルの同電池より約2倍に伸ばした。

保証期間も従来の1年からバッテリーは2年、ドライブユニットは3年と業界最長に延長し、一方で価格は従来比で5~8%安くした。ヤマハは全面改良により今年の同シリーズの販売目標を前年比15%増の10万7000台と、高いレベルに設定している。

◆アシスト力増量で原付1種市場を上回る

電動アシスト自転車の最大手は、古くから自転車事業を手掛けてきたパナソニックであり、ざっと4割のシェアをもつ。2位のヤマハは25%程度であり、同社がドライブユニットを供給しているブリヂストンサイクルの販売分と合わせてパナソニックと拮抗する勢力図にある。

アシスト自転車の市場が拡大しているのは、自転車そのものが「健康」や「環境」をキーワードに人気が高まっているのに加え、08年の法改正で踏力のアシスト量がアップされ、より使いやすくなったことが大きい。同年の販売は30万台余りに達し、29万6000台だった原付1種バイク(排気量50cc以下)を上回る市場となった。

また、アシスト自転車の価格は10万円前後であり、原付1種バイクより数万円安いだけだが、免許が不要なことや駐車場でなく駅周辺などに整備されている駐輪場に手軽に停めることができるなども人気の背景となっている。

◆ラクーンに根強いファンがいたホンダ

昨年には大人が運転する自転車に幼児2人を同乗させることが可能になり、アシスト自転車には新たな追い風となっている。かつての原付バイクのように値崩れすることもなく、ビジネス自体も「健全な状態で成長を続けている」(ヤマハ発動機の小林正典執行役員)という。

再参入の準備を進めるホンダは、95年に『ラクーン』で参入し、最盛期には年3万台を超える販売実績をあげていた。98年には折りたたみ式の『ラクーンコンポ』を投入し、このモデルのバッテリー(ニカド電池)は、いまだにマニアの間で取り引きされているそうだ。

しかし、ラクーンシリーズは後発のハンディを克服できず、00年に全面改良した後に数年で市場撤退した。再参入は世界最大手のパーソナルモビリティ(=バイク)企業として、アシスト自転車市場の拡大が看過できない状況となってきたからだ。

市場投入までには1年くらいかかりそうだが、かつてのラクーン愛好者は、ホンダらしい新たなアシスト自転車を待っていることだろう。

《池原照雄》

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