【新聞ウォッチ】トヨタ、軽自動車参入の衝撃…一寸先は闇の国内市場

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伊奈功一ダイハツ社長(左)と一丸陽一郎トヨタ副社長(右)
  • 伊奈功一ダイハツ社長(左)と一丸陽一郎トヨタ副社長(右)
  • 28日トヨタ東京本社で行われた記者会見
  • トヨタにOEM供給されるムーヴコンテ

気になるニュース・気になる内幕---今日の朝刊(朝日、読売、毎日、産経、東京、日経の各紙・東京本社発行最終版)から注目の自動車関連記事をピックアップし、その内幕を分析するマスコミパトロール。

2010年9月29日付

●民主、公明政策協議へ、補正予算巡り「部分連合」模索(読売・1面)

●トヨタ「軽」参入 ダイハツ供給年6万台販売(読売・2面)

●8月車販売37. 5%増、エコカー補助駆け込み(読売・10面)

●レアアース禁輸解除、中国姿勢軟化の動き(朝日・1面)

●昨年の民間給与下げ幅過去最大5.5%23万7000円減(毎日・2面)

●軽市場でも直接対決、ライバル各社、トヨタの販売力警戒(東京・8面)

●欧州自動車大手米での生産加速、VW、ダイムラー、フィアット 手薄の市場に攻勢(日経・7面)

●一定車間距離でズラリ、トラック隊列自動走行、日本自動車研など(日経・11面)

●中国特集:車や電機進出加速、巨大市場競争一段と(日経・37面)

●高速ツアーバス快走、シニア・女性の利用客増える(日経・39面)

●電動自転車を三菱自と商品化、イオン、1日発売(日経・39面)

ひとくちコメント

トヨタ自動車が2011年秋から軽自動車の本格販売に乗り出す。子会社のダイハツ工業からOEM(相手先ブランドによる生産)で3車種の供給を受け、軽自動車としては初めて「トヨタ」のマークを付けて年6万台規模で売り出すという。

28日付の日経夕刊が1面のトップ記事で特報したのを受け、同日午後5時からトヨタ東京本社でトヨタの一丸陽一郎副社長とダイハツの伊奈功一社長が出席し、共同会見を行った。きょうの各紙も「トヨタ、軽自動車参入」(朝日)と、1面や経済面などで取り上げている。

両社首脳の発表会見を聞いているうちに、3つの故事・ことわざが浮かんだ。1つは「背に腹は変えられぬ」。かつて、トヨタはダイハツと提携した当初、言うことを聞かないダイハツを戒めるために当時の首脳が「軽市場参入」を脅し文句として漏らしたことはあったが、プライドを傷つけない意味からも実行に移すことはなかった。

そのトヨタが方向転換に踏み切った背景には、国内の新車販売では安価な軽自動車の比率が高まっており、軽自動車を求める顧客が増えているにもかかわらず、軽を持たないことに危機感を抱いていたことがある。

2つ目は「漁夫の利」である。国内の軽市場ではスズキとダイハツが熾烈なシェア争いを展開しているが、そこへ全国5000店舗を超える販売店で取り扱うトヨタが割って入れば、ライバルの他社は脅威にさらされることは避けられない。

現に、日産自動車がスズキからのOEMで軽市場に参入したことで、ホンダなどがシェアを落とし苦戦するという地殻変動が起きている。「OEM販売の1台当たりの利益は5000円程度」(日産幹部)とはいえ、マークを付け替えるだけならリスクは最小限に食い止められる。

3つ目は「庇(ひさし)を貸して母屋を取られる」。ユーザーは同じ車種でもトヨタとダイハツのどちらのマークを選択するのかも興味深い。ダイハツは「供給の上限は6万台と決めており、大きな影響はない」(伊奈社長)なとと、OEM供給のメリットを強調するが、品不足状態が続けば、顧客は満足しないだろう。

電機業界ではパナソニックが傘下入りしたばかりの三洋電機をTOBによる完全子会社化するというケースもある。自動車業界も一寸先は闇である。

《福田俊之》

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