日産自動車にて『フェアレディZ(Z32)』のデザインや大型ピックアップトラック『タイタン』のチーフデザイナーとして活躍し、2008年より首都大学東京システムデザイン学部教授を務める山下敏男氏。
その山下氏が、オートデスク主催のイベント「Autodesk Designers Day 2010」にて講演を行い、この先10年で大きく変化するといわれるEVのデザインについて語った。
同氏は、ル・コルビュジェによる「サボア邸」(1931年)の構造が現在のビルにも応用されているという例をあげ、イノベーション・デザインという視点からのEVデザインを2つ提案した。
「まずは傘車(かさぐるま)というクルマ。蒸し暑い夏季でもエアコンなしで窓を開けて走れるクルマだ」
その絵は、コーヒーカップのようなシンプルなサイド面に、屋根にソーラーシステムを導入した“傘”をかぶせるというイメージで、傘とカップの間には隙間が空いている。
「クルマの上に傘を置くようなイメージで、傘が夏の日差しを遮り、傘とサイドウィンドウの間に隙間があるので、車内に風が入ってくるという仕組みだ」
EVのコンポジットシステムは共通化させ、上に載るボディをピックアップやスポーツカー、セダンとバリエーションを持たせられる仕組みにしたいと山下氏は語る。
「サイドウィンドウは直立というか、むしろ上広がりにした。これもサイドからの日差しを遮ることができ、車内の温度上昇をおさえることができる。バッテリーは左右から引き出して交換できるようにした」
山下氏はこの傘車についてのプレゼンの最後、聴講者たちの笑いを誘って次のデザインプランへと話を移した。
「この絵を(EVユニットを手がける)先生に見せたら『棺おけみたいだね』と言われて、『ああ、デザイナーの考えていることは、だいたい技術屋はわかってくれないものだな』と思いましたね」