MINIのEV、極端なスペックには理由がある

エコカー EV
有り余るスペックには、実証実験車両として重要な意味があった
  • 有り余るスペックには、実証実験車両として重要な意味があった
  • 後部座席は見事にバッテリーで埋め尽くされている
  • ステアリングのすぐ奥にはタコメーターではなく、電力メーターが取付けられている
  • アクセルペダルだけで発進、巡航、停止まで可能。回生ブレーキは強烈だ
  • 重量のあるバッテリーを車両後部に搭載したことで50:50の理想的な重量配分を実現しているという
  • リアハッチから。MINI Eは完全な2シーターとなっている
  • 今回4台のMINI Eが先行導入された。この車両は米国で使用された450台のうちの1台
  • センターメーターの中央やや右にあるオレンジ色のランプは、エネルギーの使用・回生状況を知らせてくれる

2011年より日本での実証実験を行う、MINIの電気自動車『MINI E』。260kgものリチウムイオン電池を後部座席に搭載し、航続距離は最大約240kmを実現。最大出力204ps、最大トルク22.4kgmのモーターを搭載し、回生率を高めたブレーキは0.3Gもの強烈な減速力を発揮する。こうした極端なスペックには、理由があるのだという。

BMWジャパン広報室の前田雅彦氏は、「MINI Eは量産を前提としたものではなく、あくまで実証実験向け。航続距離、出力、回生の具合など、実現できる最大の容量を実験車両に搭載することで、実際にユーザーが使ってみて、『これだけあれば十分』、『ここまでの性能はいらない』などの判断をしてもらい、今後の開発に役立てるという意味があります。ですから、ある意味で極端とも言えるスペックになっているんですね」と語る。

アクセルを踏み込むと、モーターならではの「ヒュイーーン」という心地よい音とともにシームレスで加速し続ける。目一杯踏むと、有り余るパワーからトルクステアを発生しステアリングをとられる程だ。

さらに強烈なのは回生ブレーキだ。アクセルを緩める事でモーターを発電機として利用し、ブレーキのエネルギーを電力として蓄える、というものだが、回生の効率を最大限まで高めているため、アクセルから足を離した途端にまるで急ブレーキを掛けたかのような凄まじい制動力を発揮する。扱いづらく聞こえるかもしれないが、逆にこれを利用する事で、アクセルペダルの加減のみで発進、巡航、さらに停止まで出来てしまうので慣れてしまえば普通車よりも余程楽に扱えると言えるかもしれない。

MINI Eの充電は給油口に設けられた充電ソケットから行う。35kWhの電池を空の状態から満充電するのにかかる時間は、200V・50A電源で約2時間半、米国規格の200V・32Vで約4時間、日本の家庭用100V電源だと23時間程度だと言う。

ちなみに、今回先行導入されたMINI Eは米国仕様のため急速充電には対応していない。日本に導入される車両についても急速充電対応の可能性は低い。BMWではこれまでの実証実験の結果から「ユーザーの1日の平均走行距離は150km、充電には5時間以上かけるケースが80%」としており、最大で240km、実用距離で180km走行出来るMINI Eにおいては「急速充電は必要ない」という意見が多かったと語っている。

2011年より日本での実証実験を開始するMINI Eだが、この計画が決まったのは日本導入が発表されたイベントのわずか1週間ほど前。そのため導入台数や価格、利用者のターゲッティングなど詳細は、まだ正式に決まっていないのだという。「EVの普及には充電インフラの整備が不可欠」とされている日本のEV市場において、MINI Eの実証実験がどのような結果をもたらすのか、未来のBMW車を占う上でも要注目だ。

《宮崎壮人》

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