【D視点】新世紀エヴァンゲリヲンルック… CR-Z

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CR-Z、開発スケッチ
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意外な魅力

ホンダ『CR-Z』のアピールポイントは、ハイブリッドカーと、今や貴重になってしまったスポーティな「2+2」シーター3ドアハッチバッククーペの車型にある。加えて、車両価額226万8000円には割安感もある。

寸法は、全長4080mm×全幅1740mm×全高1395mmと小粒、4輪を張り出して低く構えた走りのスタイルは、最近にしては珍しくインパクトがある。アンバランスで、固まりを切り裂いたような痛々しいデザインは、大人には難解でも若者には受けそうだ。

スポーティな車型に、CVTでだけではなく、6速MTも設定されているので、スポーツ好きも注目しそうだ。しかし、省エネを基本とするハイブリッドカーで、エンジンとモーターを合わせたトータル出力も並なので、期待通りの楽しい走りを提供出来ているかどうかが気になる。

ターゲットは団塊世代となっているが、この世代はクルマの味にうるさい。むしろ、ハイテクシステムに抵抗もなく、「スポーティカーの魅力を知らない」若者には、流行のエヴァンゲリヲンルックが、案外と愉しく映りそうだ。

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ジャパニーズコミック

エヴァンゲリヲンルックのエクステリアデザインもさることながら、CR-Zのインストルメントパネルの立体的なイルミネーションも注目される。燃費状況を示す照明色や、シフトアップ/ダウン、エコドライバーのインジケーター等、表示が絶えず変化しているのだ。

インストルメントパネルのイルミネーションの目まぐるしい変化は、丁度アーケードゲームを見ているような高揚感がある。台の前で一日暮らすパチンコマニアなら既に体験済みであろうが、アーケードゲームに興味が有りながら風采や年齢でゲームセンターに入るのを躊躇っていた人にも、お勧めか。

多彩なイルミネーションで楽しさを倍化させているアーケードゲームやパチンコ台は、日本のデザインのお家芸と言える。これらゲーム機のクルマ版として、CR-Zのインストルメントパネルも世界に認知されるかもしれない。しかし、僅かな判断ミスが重大な事故につながるクルマには、一定の節度が求められる。

インストルメントパネルの楽しさ追求と、安全性の確保との関係は、今後研究課題となりそうだが、問題になる前に、メーカーの誠意ある姿勢が求められる。近年急速に普及している、運転に関する電子ディバイスの採用と安全性の確保についても、同様の問題をはらんでいる。

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新時代のクルマ検証

昔のことではあるが、マン島でのバイク世界一の頑張りや、F1でのマクラーレン・ホンダの優勝などの偉業から、ホンダ創業者のスポーツへの情熱は特別な印象があった。この印象が残っている団塊世代には、F1からの撤退や、最近発表されるクルマのパンチの無さなど、ホンダに失望している人も多い。

このような人にとって、スポーツイメージの強いCR-Zの発表がホンダによる久々の快挙に映ったようだ。とりわけ、ホットなスポーツカーにしか使われない6速MTの設定は、初期受注の4割がこれを選択したことからも、強烈なアピールポイントであることが分かる。

実は、団塊世代を少しオーバーした筆者も、6速MT仕様のスポーツ性能への期待は大きく、試乗してみた。しかし、エンジン音を聴き、ヒール&トゥを楽しむ以前に、電子ディバイスの介入が気に障り、運転を早々と切り上げてしまった。新薬開発のように、ユーザーに告知済みの「実験車」なら、冷静な評価も出来たのでは、と思う。

エコへの配慮は、これからのクルマには避けては通れない課題だが、運転の楽しさも残して欲しい。CR-Zは、欧州でも6速MT仕様の販売計画があるようだが、運転の楽しさの追求では欧州が先輩だ。そこでの評価はハイブリッカー発展の必須要件と考えるので、成果を期待したい。

D視点:
デザインの視点
筆者:松井孝晏(まつい・たかやす)---デザインジャーナリスト。元日産自動車。「ケンメリ」、「ジャパン」など『スカイライン』のデザインや、社会現象となった『Be-1』、2代目『マーチ』のプロデュースを担当した。東京造形大学教授を経てSTUDIO MATSUI主宰。【D視点】連載を1冊にまとめた『2007【D視点】2003 カーデザインの視点』を上梓した。
《松井孝晏》

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