【池原照雄の単眼複眼】国内生産ボリュームは危機的状況

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雇用は細り、人材育成に支障

2009年の国内自動車生産は前年を32%下回る約793万台と大きく落ち込んだ。国内工場は常に最先端の生産技術を開発する場であり、海外工場の「マザー機能」も担ってきた。

しかし、800万台レベルでは雇用は細り、人材育成にも支障を来たす。為替変動リスクなどを理由に国外へ逃避すれば、生産技術力の弱体化は否めない。国内工場は「量」の確保という正念場が続く。

800万台割れは1976年以来、実に33年ぶりであり、生産量世界トップの座も中国に明け渡した。昨年の落ち込みは、北米や欧州など先進諸国向けの輸出が不振を極めたことが大きな要因だ。輸出台数は46%減の約362万台にとどまり、生産に占める輸出の比率は46%と、前年から13ポイント低下した。

企業別の輸出台数は、ホンダや三菱自動車工業などが6割強も減少している。ホンダは、生産の海外展開がもっとも進んでおり、昨年のように激しく需要が落ち込んだときは日本がバッファー役となって現地生産を優先させる戦略を取る。

◆ホンダは100万台には戻らない?

為替が円高に触れた時は、現地優先に拍車がかかる。2009年はまさにそうした展開となった。ホンダの業績回復ぶりが業界で際立っているのは、世界トップの2輪車の強みがあるが、4輪車事業で国内外生産を操ることのできる「柔構造」も寄与している。

同社の2009年の国内生産は34%減の84万台。社内には「為替の関係からも、もう100万台には戻らないという覚悟が必要」との見方もあるという。もっとも、「国内生産はモノづくりの基盤であり、(海外工場の)マザー機能も担っている」(青木哲会長)という以上、現状のような国内生産水準では「基盤」が揺らぐ恐れがある。

◆2年遅れとなる「生産改革」

ホンダは2010年から操業させる計画であった新鋭の寄居工場(埼玉県寄居町=能力年20万台)について、2度に渡って稼働時期を延長、現在では「12年以降」としている。寄居では国内での素材技術などの集積をバックグラウンドに「日本ならではの生産改革を実現する」(福井威夫前社長)方針だった。

未曾有の需要崩落があったとはいえ、そうした構想は2年遅れとなっている。ホンダに限らず、国内生産部門の深刻な需給ギャップは、人材育成や技術革新にボディーブローのように利いてくる。

業界全体では、2006年から2008年の生産レベルに比べると足元の国内工場稼働率は7割程度に落ちている。「国内需要はもう伸びない」などと達観するのでなく、国内外でこまめに台数を確保して稼働率を上げることが急務だ。それが新鋭の設備導入などを通じた「基盤」の強化につながる。

《池原照雄》

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