【日産 フーガ 試乗】走りは良し、サポート系メカはまだまだ…河村康彦

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フルモデルチェンジでより“ヌメヌメ感”の強いデザインが与えられた新型『フーガ』のルックスは、日本のフラッグシップセダンとしては例外的なまでに強いエモーショナル感が特徴。「それって日本のオジさんたちは余り好みではないのでは?」と開発責任者に質してみたら、「事前調査の結果ではとても好評」との事。

なるほど、日本人の好みも変わりつつあるんだナ、と納得しようとしたものの、納得出来ないのは右側直近前方に出来る死角の大きさ。ちょうど“目線”の高さにある大きなドアミラーと、何故か根元付近で太さを増すAピラーのお陰で、右折時の視界がかなり「蹴られてしまう」のが大問題。どうやら開発陣の中にもそれに気付いていてちょっと問題視をしている人も居るようだったけれど、だったらどうして「そのまんま出てきちゃう」かな…。

そんな(しかし、決して看過は出来ない!)一点を除くと、走りの基本質感はなかなかの高さ。今やFRセダンを作れるメーカーは世界でも限られるものの、確かにそれに拘っただけの価値はあるという高質さを実感出来る。ちなみに、2種類が用意をされるエンジンには1.2リットルもの排気量差と100ps以上もの出力差が存在するものの、今回はいずれも7速ATが奢られる事もあって、よほど特別な動力性能を求めるのでなければベーシックな2.5リットル・モデルの方で十二分。

一方、アクセルの踏み過ぎを押し戻す“エコペダル”や全車速追従機能付きのクルーズコントロール・システムといったドライバー・サポートメカのチューニングは、どれも「まだまだ」という印象が拭えない。

いずれもリアルワールドでは違和感に繋がる場面が多々あったし、ナビの道路情報を拾って減速を行う後者は、交通量の多い首都高速などでは時に追突される危険すらを感じたというのが現実。日本では、そんなメカのテストを公道上で行うには制約が多く、さらに今の御時勢、思ったように残業も出来ない(!)といった事情もあるらしいけれど、正直言って「現在の出来では合格点を与えるには遠く至らない」というのが自分の判定。

それにしても、今のタイミングでデビューというニューモデルならば、アイドリング・ストップメカの採用やエンジンの直噴化といった、フラッグシップ・モデルらしさをさらに高める何らかの“飛び道具”が欲しかったもの。そんなアイテムを続々採用する欧州モデルに対して、そうした点でパワーユニットに先進性の演出が無いのが残念。

■5つ星評価 パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★

河村康彦|モータージャーナリスト
1985年よりフリーランス活動を開始。自動車専門誌を中心に健筆を振るっているモータージャーナリスト。ワールド・カーオブザイヤー選考委員、インターナショナル・エンジンオブザイヤー選考委員。

《河村康彦》

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