「バイクで脳トレ」川島教授が世界初の研究結果報告

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3月4日、ヤマハ発動機と東北大学川島隆太教授(加齢医学研究所)は、「二輪車乗車と脳の活性化の関係」についての研究結果を報告した。二輪車に乗ると脳にポジティブな影響を与えられるようだ。

川島隆太教授はニンテンドー『DS』で大ヒットを記録した「脳を鍛える大人のDSトレーニング」で有名な教授。都内で行なわれた説明会には、多くの関係者が詰め掛けた。

「バイクに乗ると若く見える」「バイクに乗ったら若返った」というような声を聞くが、これを科学的に検証できないか、というヤマハの要望が発端になった。

バイク好きとして知られる川島教授だが、今回の調査は「バイク運転で脳が働くか?」を検証したものだと語る。いままで自動車の運転では行なわれていた実験だが、二輪車では世界初の実験だと言う。

この実験は脳の活動を測定する機器が大型になってしまうため、二輪車の積載量では実験が不可能だった。今回は日立製作所基礎研究所が最新型の計測器「携帯型光トポグラフィ技術試作機」を開発したため、バイクを運転しながら脳の活性化を測れるようになった。

ひとつめの実験は、2008年6 - 7月にスポーツランドSUGO構内にて行なわれた。バイクを運転する被験者は、中型免許以上を持つ現役ライダー11名(平均年齢 45.4歳)と、免許は所持しているが10年以上ブランクがある元ライダー10名(平均年齢 46.2歳)。この21人のなかから、解析可能なデータを取れた11名のデータを使って調査を行なった。

実験の内容は、二輪車でさまざまな状況のコースを運転し、そのときの脳の活動を前述した機器によって計測するもの。コースは連続コーナーや悪路、勾配、ヘアピンなど、8種類が用意された。

集めたデータを解析した結果、現役ライダーと元ライダーでは、脳の使い方がまったく異なるというおもしろい統計が出た。

現役ライダーが二輪車を運転するときは、運転時に脳(左半球前頭前野)が活性化され、集中力が高まっていた。一般的にはブランクがある元ライダーのほうが運転に集中すると思われがちだが、普段から運転しているライダーのほうが脳を活発化させて運転に注意している。

そして、2008年6 - 11月に行なわれたふたつめの実験では、「自動二輪運転の生活習慣が脳機能に与える影響」を調べた。こちらの被験者は、自動二輪免許を所持しているが、10年以上運転していない健常者。実験の内容は、2か月の間、通勤などの生活場面で自動二輪を使用させ、脳とメンタルヘルスがどのように変化するかを調査。

結果は、自動二輪を生活のなかで使用すると、さまざまな認知機能が向上することがわかった。特に記憶力や空間認識力が上がる。また、メンタルヘルスに関するアンケートを行なっても、ストレスが軽減し、精神的によい状態に変移したという。これによってバイクを2か月間使用した被験者は、体調がよくなったり、ミスが減ったり、なにごとにも楽しめるようになったそうだ。

質疑応答では「元々二輪免許を持っている人が被験者なので、バイクに興味があるのは当然。なので乗ったら楽しくなるのは自然では?」という質問が挙がった。しかし川島教授は、「その質問はもっともだが、脳が楽しいと感じられるのはわずかな時間であって、2か月間も楽しいと思う信号を出し続けられない。そのため今回の実験は2か月も続けた。なので、二輪車を運転するときの脳は、元々バイクが好きという感情の他にも、なんらかの働きが起こっているはずだ」と語った。

さらに、「なぜ二輪車なのか? 自動車の運転でも同じ結果が出るのではないか?」との質問も投げかけられた。これに対して川島教授は、「その研究結果は過去にいくつか出ています。自動車はとても快適な乗り物で、脳の活性化は起こらない。活発に動くときは、踏み切りを通過するときか、急に人が飛び出してきたときくらい」と返答。二輪車運転時の脳とは明らかに違うようだ。

すべての研究結果報告を終えた後に川島教授は、「自動二輪を生活のなかで使うことによって、脳と心にポジティブな影響を与えることができると考えられます」と締めくくった。近年バイクは「うるさい」とか「危ない」、「ジャマだ」などと世間から煙たがられることが多いが、川島教授の研究結果では、スマートエイジング(年齢と共に人生が豊かになっていくこと)に有効な乗り物ということがわかった。普段の生活で二輪車を運転するということは、「脳を鍛える大人のトレーニング」なのかもしれない。
《佐藤隆博》

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