次期『MRワゴン』のコンセプトモデルとされるスズキ『Mom's Personal Wagon』について、チーフデザイナーとしてこのクルマのデザインをまとめた結城康和氏に話を聞いた。「名前のとおり、小さなお子さまのいるママのための軽ワゴン、というのがコンセプトです」
「実は現行MRワゴンも『箱っぽくない外観』『リビングのような内装』の『30歳前後の女性向け軽ワゴン』というコンセプトは同じです。ただ、現行は、ワンシェイプのスポーティな外観が男性的に見えたりして、女性向けというのがうまく伝わらなかったのかな、という思いもあり、もう一度コンセプトの原点に帰り、現行のカタチにはこだわらずにデザインを進めました」
「開発時、とにかく女性の意見を聞いてまわりました。『女性のための機能的ベネフィット』という点では、クルマの機能について、一番困ってらっしゃるのが、特に小さな子供のいる女性ということで、そこにフォーカスしました」
「『運転時にも子供へのアクセスが良いレイアウト』『ミルクをあげるときに便利な引出しテーブル』『買い物カゴがそのままポンと置ける助手席トレイ』や、『直射日光が顔に当たらない(ひさし的な長さの)ルーフ前方の長さ』などは、すべて、女性から出てきた切実なアイデアを元にしています」
「また『子供が自分で乗り降りするときの安全性』という点でもこだわり、幼稚園に比較車を何台も持ち込んで、実際にお子さんを乗り降りさせて、データを取りました。ドア下部の開口形状の工夫やステップの大型化、ドアが開く角度、子供が無意識につかみやすいドアアームレストの形状なども、盛り込んでいます」
「それらを含めて、このクルマでは、かなり真面目に“インダストリアルデザイン”をやったと思っています」
「デザイン的には、現行MRワゴンよりも広い空間を取りながら、エクステリアの立体感をどのくらい出せるか、という挑戦や、多機能をいかに嫌みなくシンプルでスマートにまとめるか、かわいいけど甘すぎないムードの良さをどう出していくか、など苦労しました」
「このクルマは、顔がニコッと笑っていますが、こういう、ママと子供にとっての安全性や便利さなど、真面目な積み重ねをきっちりやってあるクルマですので、将来このクルマのオーナーとなられる女性の方にも、安心してニコっと微笑んで乗っていただけるようなクルマになるといいですね」