乗ったのは19インチのヨンマルを履く“350GTスポーツパッケージ”だけである。日産は昔から「中年の走り屋」というものが日本には数多く存在すると無邪気に信じているようなフシがある。
この『フーガ』もまさにそんな層に向けたクルマである。エンジンは吠えるし、乗り心地は、タイヤがタイヤだけにかなりハードだ。そのかわりハンドリング重視で、コーナリングは柄に似合わずシャープである。ステアする後輪が、自ら安定を探すような“動き感”がある。ただし、『フェアレディZ』と同じく、限界時の駆動制御が少し余計なお節介に過ぎる。
試乗車の茶色いレザーインテリアは大迫力だった。いままでの日本車にはなかった強い色である。センター部がせり出すダッシュボードも大胆だ。
『クラウン』とは違う、新しい高級車をつくろうとする熱意はすごく感じられる。でも、日産の上級セダンなら、ぼくは『ティアナ』の上品さを買う。
■5つ星評価
パッケージング:★★★☆☆
インテリア/居住性:★★★★☆
パワーソース:★★★☆☆
フットワーク:★★★★☆
オススメ度:★★★☆☆
下野康史| モータージャーナリスト
自動車専門誌の編集部を経て、モータージャーナリストに転身。現在はクルマ雑誌を始め、週刊誌のコラムなど幅広く執筆活動を行っている。親しみやすい文体のなかに見える、鋭い着眼点や独特の語り口にファンは多い。