運転席に座ったバスジャック犯は強盗犯---主張は通じるか

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今月5日に静岡県磐田市内で遠州鉄道が運行する路線バスを乗っ取り、運転手を一時車内に拘束したとして人質強要処罰法違反容疑で送検されていた42歳の男に対し、静岡地検浜松支部は26日、同容疑での起訴を見送り、さらに厳しい強盗と銃刀法違反の罪で起訴したことを明らかにした。

「模倣性の高いバスジャック犯は厳重に処分する」という流れがすでに定着しており、これに従ったものと思われる。

この事件は今月5日に発生している。同日の午後4時5分ごろ、磐田市内を走行していた遠州鉄道バスが刃物を持った男に乗っ取られた。男は先に乗っていた客2人にバスから降りるように促すとともに、新たに乗り込もうとした乗客に対しては「危ないから乗るな」と告げた上で運転手には「富士市まで走れ」と要求していた。

男は40分後に車内へ突入した警察官に銃刀法違反と逮捕監禁の現行犯で逮捕されたが、後の取り調べで「交通事故の罰金10万円が払えなくなり、懲役に変えてもらう交渉をするため静岡地検富士支部に行こうと思った」と供述。

「当初から逮捕されることを目的としていた」ともほのめかすなど、通常のバスジャック事件とは異なる一面を見せていた。

後の調べで、この男は昨年5月に交通事故を起こし、7月に静岡地検富士支部から罰金10万円の略式命令を受けていたことがわかった。

ところが男は支払い困難を理由に納付を行わなかったことから、この日の午前中に担当者が「懲役に切り替えて、労役場で働いてもらうしかない」と告げた。男はこれが原因で自暴自棄となり、バスジャックを企てたという。

検察では男の罪状について慎重に検討してきたが、逮捕容疑の人質強要処罰法違反では懲役期間が6カ月以上10年未満と比較的短く、バスジャックという重大犯罪にはふさわしくないと判断。より罪が重く、刑罰も5年以上の懲役と長い強盗と銃刀法違反に切り替えることにした。

男はバスジャックしたのみで、乗客や乗員から現金を奪うことは無かったが、「威力(刃物)によって脅した上で運転手を降車させ、バスを強奪したこと」が強盗に当たると検察では判断したらしい。

警察の突入直前、男はバスの運転席に座って、自分で走らせる素振りをみせたが、これが強盗に当たるかどうかは正直言って微妙なところだ。

バスジャックについては模倣性の高い重大犯罪だけに、厳罰で対処するというコンセンサスはあるものの、今回の地検判断はいわばグレーゾーンともいえるギリギリの判断ではなかろうか。裁判所が「強盗罪」をどう判断するか。

《石田真一》

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