非金属製のディスクはモータースポーツ界では珍しくもないが、ロードゴーイングカーに使用するにはいくつか問題があった。
ポルシェの隣人かつライバルであるメルセデスベンツがセラミック製ブレーキの草分けであるが、そのシステムはほんの一部のAMG『CL55 F1』、しかもそのフロントにだけ適応されるものだった。
一方今回のPCCB はフロント、リア両方に対応し、その効果はイタリアのピレリ社のテストコースで充分に証明されている、とポルシェは主張する。とはいっても、標準型『911タ−ボ』の鋳鉄製ブレーキもなかなかの優れもの、よほど注意して比べないことにはPCCBシステムの真の良さは分からないかもしれない。
ブレーキペダルの踏み込みは短く、ペダルからは手に取るようなあの感触が伝わってくる。即座のリアクションが違う。ポルシェの言うところの摩擦に対する反応の改良がここに現れているようだ。また、鋳鉄製ディスクが数回の急ブレーキにより磨耗が生じるのに比べ、この新しいセラミックディスクには全くといっていいほど変化が見られない。
温度が上昇してもあのやっかいな振動はない。言いかえれば、どんなに激しくブレーキを使っても、その感触は初めてブレーキを踏んだときと変わらないというわけだ。路面が濡れたコンディションで、PCCBシステムの性能はより発揮される。それはより短い制動距離を可能にする、瞬時に働く安定した機能のおかげである。
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