今回発表された『シビック』5ドアは全高が1495mmまで上げられ、ぐっとミニバン的要素を強めたように思えるが、実際はそうではない。実物は1495mmもあるようには見えない。
このあたりのテクニックを、エクステリアデザインのプロジェクトリーダーを務めた、本田技術研究所和光研究所デザインBスタジオ(現在W・A・V・Eデザインスタジオに異動)の小林正樹アシスタントチーフデザイナーに伺った。
「デザインをどうしよう、というのではなく、どんな空間にするのか、ということをまずみんなで話し合ったんです。そこで“気持ち良さ”ということにこだわって、レイアウトから入りました」と語る。今回のシビックはどうやらこの“気持ち良さ”が大きなテーマとなっているようだ。
「空間に上屋をかぶせるだけだとRVになっちゃうでしょう。空間の大事なところを守りながら、最終的に乗用車のたたずまいにすることがエクステリア・デザインなんです」まさに今回のシビックは新しいモノを作ろうとチーム全員が一丸となって進めていったプロジェクトのようだ。
乗用車ということにこだわったのはリアのデザインによく現れている。サイドから見るとハッチバックなのに、斜前や真後ろから見るとまるでノッチがついているように見える。「マジックです」と小林正樹アシスタントチーフデザイナーは笑う。
まさにここが今回のシビックのデザインのポイントである。ハッチバックのように見えると同時に、見た者にどこかノッチバックらしい印象を与えることで、新しさと乗用車のたたずまいを両立させているのだ。これは写真では伝わりにくいことなので実物で御確認いただきたい。