【メディアウォッチ座談会】ストリートなクルマ雑誌×2

モータースポーツ/エンタメ 出版物

『OPTION』1999年12月号 VS 『THE BIG SEDAN』1999年12月号

M ここでは『OPTION』と『THE BIG SEDAN』という、ストリート系自動車雑誌(?)の最新号を見てみたいと思います。まずは『THE BIG SEDAN』から。この本は、セド/グロやクラウン、セルシオなんかを改造する、いわゆる「VIPカー」好きのための雑誌です。12月号の特集は「百花繚乱・後姿選手権」。

S いいタイトルだなあ(笑)。僕はけっこう、こういう人の世界は嫌いじゃないんです。これは江戸時代の「歌舞伎もの」の現代版ですね。ジャパニーズ・バロックというか。

F 僕にはこの感性はどうしても理解できない。まったく論理性がないでしょ。

S これは一種のマッチョイズムの発露ですよ。いくら電通や大メーカーがオシャレな消費トレンドを作り出して、日本を席巻しようとしても、日本人の民俗の血はこういうところで爆発してしまうんですね。いわば、お祭りの神輿みたいなものです。

T この世界は、一見文法がないようで、じつはあるスタイルが確立すると、それがまたたく間にエスカレートするんですね。渋谷のヤマンバギャルと同じです。

F それにしてもこういう本に出る人って、みんな20代前半ですが、どうやって数百万円も改造費を稼いでいるんだろう?

S 自動車エンゲル係数がものすごく高いんですよ。95%とか(笑)。

M でも、こういうクルマに乗っている人って、実際に会ってみると、見てくれはコワくても実はいい人たちで、目立ちたがりやなんですよ。取材にいくと、すごく喜ばれる。

T 私が気に入ったのは、読者公募のY31セド/グロのリアデザイン・コンテストをやっているところ。玉石混交だけど、けっこうそのまま製品化できそうな上手いものもあります。

F それでもやっぱり、僕には普通の国産車に600万円とかかけるちゃう神経は理解できないですね。たとえばヨーロッパだと、若い人はお金がないし、仮にお金が出来たりしたら、新車のポルシェを買ったりするでしょ?

S いや、日本人にとっては「努力する」ことが大切なんです。600万でノーマルのポルシェを買っても、だれも尊敬してくれないんです。無駄なお金をより多く使った方が支配権を持つ。これは文化人類学的に言うと、ネイティブ・アメリカンのある部族に見られる「ポトラッチ」とという現象に近いですね。

F だからどうした、という話ではありますが(笑)。

M いっぽう『OPTION』は走り屋雑誌の老舗です。ライバル誌の『CAR BOY』の読者がDIY派なら、『OPTION』の読者はショップにお任せで改造する人が多いといわれています。

S この号では稲田大二郎氏が、アメリカにチューンドGTRを持ち込んで「独走」キャノンボールをやっています。こういう壮大にバカげたことをやる企画、僕は好きですね。

T それに日本車の改造は、最近ではアメリカや東南アジアでも流行っていて、日本のチューニングパーツは世界的なマーケットになっているみたいです。この号でもブルネイの走り屋の取材をしていて面白かった。

M 今月号では「かゆいトコロに手が届く孫の手パーツ」と称して、革新的なアイデアパーツを特集しています。調整機能付きのアッパーマウントやスタビライザーなんかを紹介していますね。
F いずれにしてもドライバーにセッティングの自由度を高めるというものが多いみたいです。

S 広告も面白いんですよ。この世界もVIPカーと同様、「目立ってナンボ」の世界ですから、シルビアの顔で180SXボディの『シルエイティ』や、顔がローレルでボディがセフィーロの『セフィーレル』とか、魑魅魍魎が跋扈していますね。やっぱり日本人のお祭り好きは、この世界でもいかんなく発露されているようです。

座談会メンバー
S:陶山 拓(まとめ)
M:三浦和也(auto-ASCII24)
T:高木 啓(auto-ASCII24)
F:藤田耕治(auto-ASCII24)

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