Prologue < TOP | 1 2 3 4 | NEXT >
Windows Automotive ―― カーナビ
 Windows Automotiveは、カーナビなどの車載情報機器の開発に特化したWindows CEと考えてよい。現在はWindows CE 5.0をベースにしたWindows Automotive 5.0がリリースされている。

アルパインのカーナビ「モービル・メディア・ステーション
X075シリーズ」の「VIE-X075B4」
 Windows Automotiveならではの付加価値で代表的なものは、二つある。Automotive User Interface Toolkit(AUITK)とAutomotive System Tools(AST)である。

 AUITKにより、高品位で自動車内での使用に適したHMI(Human Machine Interface)を効率的に構築することができる。従来の組み込みシステムでは、画面デザイン細部のわずかな変更でも、組み込みシステムのソフトウェア全体を再確認しなければならなかった。一方、AUITKは機能を実現するプログラムと画面デザインを実現するプログラムを完全に分離したので、画面デザインを定義した「スキン」の変更だけでデザインの変更が可能になっている。加えて、この「スキン」は機能プログラムとは独立して開発することができる。

 カーナビならではの特徴として、非常に多くの表示バリエーションが求められることがあげられる。自動車メーカー純正のカーナビでいえば、たとえば搭載される自動車の価格により機能は同じであっても自動車のクラスに合ったデザイン、高級車には高級車なりの、また普及車には普及車なりの画面デザインが求められる。
 しかも、同じ車種であっても、内装デザインやその色に合わせたカーナビ画面というニーズもある。さらに自動車は国際商品であり、画面の表示は現地の国の言葉で行う。画数が多い漢字を表示しなくてはならない日本向けと、英数字や記号だけでよいアメリカ向けでは、同じカーナビでも最適な画面表示は異なるのだ。

 これら多くのバリエーションを作り分けるために、それぞれ細かなカスタマイズが必要となってくる。AUITKでは「スキン」を変更することで効率的にバリエーションを実現可能というわけだ。ソフトウェア開発者だけでなく、デザイナーが直接ユーザーインターフェースを作ることができるようになると言えば、その効果が理解できるだろう。

カーナビ画面:高級車向けウッディーデザイン

カーナビ画面:普及車向けモダンデザイン
 一方ASTは、限られたハードウェア資源を効率よく使用するためのツールとランタイム群である。主に価格の制約により、ある「年」にカーナビに採用できるCPU、グラフィックチップ、メモリ量が決まってくる。パソコンでは能力が不足した場合、ハードウェア能力の増強を考えるが、組み込み機器では現在あるハードウェア資源をいかに「使い切る」かが商品力となる。

 しかし、単に「使い切る」という言葉はシンプルではあるが、その現場においては膨大な数のプログラムとそのハードウェア資源使用に対してのチューニングが困難を極め、多くの開発時間が割かれている。
 ASTでは5つのツールとランタイムで、システムのリソース配分の確認やチューニングのための解析を助ける仕組みが提供されている。たとえばCPU時間測定ツールでCPUの稼働を確認し、不自然にCPU時間を使うプログラムを把握できる。メモリ測定ツールではグラフィカルに表示されたメモリ使用状況からデータやプログラムの効率的な配置を考えられる。システムモニタリングツールでは、ソフトウェアの実行スピードでボトルネックとなっている部分の特定を支援する。これらは従来までの作業効率を大きく改善し、結果として品質と信頼性が高いカーナビを実現するのだ。
TOP BACK NEXT
Response. Response.
Copyright (c) 2010 IID, Inc. All rights reserved.
ご意見・ご質問はこちらまで
広告掲載のお問い合わせ
個人情報保護方針