フミア---新型車の開発にはデザイナーだけでなく、エンジニアやマーケティング担当など多くの人が関係しています。そういった人たちは、とくに最終デザインにおいてどれぐらい影響していますか?
バングル---7シリーズを例に挙げると、マーケティング部門からプレゼンス、インパクトのあることが要求された。たしかに最終デザインのプロポーションは改良できるかもしれないが、7シリーズに不可欠なステートメント=表明を実現するためには、新しいことへのトライは許されなかった。その後の6シリーズは充分にパワフルでしょう?
マーケティング部門は、7シリーズの主要市場、アジアやロシアにおける存在感をデザインに要求してきたのです。ただし「今」の市場調査結果でしかありません。未来を見通した提案をデザイン案に盛り込みます。そしてデザイン案を絞り込む過程において、デザイナーが最適だと思うデザインに導くのです。
こういったときは、バーチャルモデルよりも、いつでも誰でも見ることのできるリアルモデルが便利ですね。
フミア---私自身フリーランスなんですが、大手メーカーと外部デザイナーとの協力が少なくなってきています。BMWには何かポリシーがあるのですか? イメージが悪いとか。
バングル---そんなことはありません。外部からのヘルプも頼みますよ。かつてイタリアのミケロッティと協力関係にありました。ただ、表に現れた複数のモデルの間にあるギャップの実態は、社内にいないとわからないということはあります。
外部デザイナーには我々社内デザイナーをプッシュしてほしいですね。我々のアイデアを超越するような。
フミア---バングルさんご自身はデザインはしないのですか。
バングル---しますけど、デザインはチームの仕事です。私がスケッチを描いてそれを部下に渡して「これをやりなさい」ではない。デザインはオーケストラに似ています。私は指揮者ですね。たとえば練習のときに、ひとりのバイオリンをとって、こうやって弾くんだよ、と教えることはあります。
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