編集部 最近は、ブーレイさんが三菱に移籍したように、企業立て直しの任を負って日本メーカーに就任する外国人デザイナーが相次いでいます。日本企業そしてデザインの改革は外国人でないとできないのでしょうか。ブーレイさんもフミアさんも日本メーカーとのつきあいは長いものがありますが、いかがですか。
フミア うーん。その質問には答えられませんねえ。わかりません。でもフィアット・グループにはアメリカ人のチーフデザイナーがいますし、BMWのデザイントップもドイツ人ではありません。トップが外国出身なのはもはや珍しくありません。問題にならない、普通のことではないでしょうか。
ブーレイ 人材採用の優先条件はやはり才能でしょう。スバルでは当時の杉本清部長がオープンマインドな方でした。
私は三菱にくる前、ドイツメーカーに勤めるラテンのフランス人でした。日本人は勤務時間はドイツ人のように厳格・厳密に働き、勤務時間が終わってドリンクタイムになるとラテン的陽気さで楽しみますね。個人的にはうまくいってます。
フミア 日本も国際的な人材流動市場に組み込まれた、そういう時代でしょうね。
ブーレイ 上司が外国人であるということに日本人として何らかのコンプレックスを持つことはありませんよ。
編集部 ここで新たな疑問があります。グローバル化の進む現代、日本メーカーだからといって日本的である必要性はあるのでしょうか。
ブーレイ (語気を強めて)それはもちろんです。メルセデスベンツは明らかにドイツメーカーですがグローバル企業ですね。ソニーだって日本企業としてグローバルに認知されているではないですか。グローバル化はアノニマス(=無名)化ではありません。国際化が日本の固有性を失うという考えには反対です。
フミア そうです。食べることを考えてみましょう。フランスもイタリアも独自の食文化を持っています。そしてフランス料理もイタリア料理も世界中で人気です。
ブーレイ “グローバル・フード”なんかありはしない。あったとしたらコントラストのない退屈な世の中でしょう。それゆえにデザイナーの仕事には責任があり、デザイナーは自国の文化に誇りを持たなければならないのです。
フミア 東京にはいいイタリアン・レストランがありますけどね(笑)。
|