●ものづくりを通じて、豊かな国や社会づくりに貢献していく

――GM、フォード、ダイムラー・クライスラーなど世界の強豪自動車メーカーと互角に競争し、勝ち残っていくためのトヨタグループ結束強化、環境技術やITへの対応を進めつつも、社長として取り組むべき重要な経営課題は山積していると思いますが、その中のひとつである国内販売シェア(市場占有率)についてうかがいます。軽自動車を除いたシェアの目標を40%以上としていましたが、10月のシェア46.4%を見ても、この目標はクリアしていますね。

 お陰さまで、そうですね。

――となると、新たな目標として、軽自動車を含めたシェアで、年間40%を掲げることになりますか。

 (含む軽自動車のシェアで)40%やろうじゃないかということは社内では言っているんですよ。ただ、そのために、ダイハツはこれだけ獲りなさい、トヨタはどれだけと、分けて考えているところまではいっていません。いまのところ何が何でもという目標ということではなく、ダイハツと一緒になって、40%のシェアを獲るようがんばろうという感じなんですよ。



――10月の含軽のシェアは43.1%ですから、通年で40%という数字は不可能な数字ではないですね。

 ええ、そう思います。

――21世紀のトヨタあるいはトヨタグループのあるべき姿をデザインすることも、社長としての経営課題のひとつだと思いますが、21世紀に、トヨタあるいはトヨタグループはどうあるべきで、何を目指すのでしょうか。

 昭和10年に、豊田佐吉翁が遺訓としてまとめられた「豊田綱領」の中には、「産業報国」という言葉があります。それを実現すべく、トヨタは創業以来、ものづくりを通じて、わが国の産業発展に寄与し、豊かな社会作りに貢献することを使命にしてきたんです。「産業報国」の国を、現在に置き換えますと、「地球」、「世界」、「地域」であり、ものづくりを通して世の中の人々に尽くすということだと思います。トヨタが目指してきた、この姿勢は21世紀においても変わらず、持ち続けるべきでしょうね。21世紀も、やはり、ものづくりを通じて、豊かな国や社会づくりに貢献していくことが、われわれに課せられた使命だと思います。

――外資との資本提携や欧米流の経営手法を採り入れる企業が増えています。トヨタはあくまでグループの結束で単独での生き残りを目指し、雇用面など日本型経営の良い面を継続しているように思えます。この双方が日本の産業界でいませめぎあいを行い、どちらが勝つかで、日本の企業のあり方、ひいては日本の社会のあり方が決まると思います。トヨタの社長としての張さんの責任はじつに重いと思いますが。

 最近、グローバリゼーションと称して日本の従来のやり方は良くないとされる風潮があり、日本の産業界全体が浮き足立ち、自信をなくしている感はありますね。こういう時だからこそ、これまで日本経済をリードしてきた製造業が、いまいちどモノづくりの原点に立ち返って、日本経済の牽引役を果たしていくべきです。

東京大学法学部卒。60年、トヨタ自動車工業株式会社に入社し、88年トヨタ自動車株式会社(82年に社名変更)取締役就任。同年12月、トヨタモーターマニュファクチャリングUSA株式会社取締役社長となる。94年、トヨタ自動車株式会社常務取締役就任。99年6月より、取締役社長として指揮をとる。

経済誌編集長を経てフリー経済ジャーナリストへ。「週刊文春」「週刊現代」「週刊朝日」「プレジデント」などの雑誌や、「ニュースジャパン」(フジTV)で活躍。著書に「トヨタ創意くふう提案活動」「自動車大ビッグバン」などがある。

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