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●ITについては、ものづくりを基本に考える
――トヨタは、トヨタグループの結束を図りながら、GM、フォード、ダイムラー・クライスラーなどの世界の強豪自動車メーカーと競争しているわけですが、競争の勝敗を決める要因としてまず環境技術が挙げられています。それと同様、いやそれ以上といってもいいかもしれませんが、ITへの取り組みも勝敗を決める重要な要因だと思います。この分野でトヨタはKDDIという総合通信会社をグループに持っている点で、GM、フォード、ダイムラー・クライスラーなどのライバルに対して優位に立っていると思います。トヨタは自動車という商品にITをどのように取り込もうとしているのかを含めて、トヨタのITに関する基本的戦略をお聞かせください。
張 社長(以下 張) われわれは自動車メーカーですから、ITについてはものづくりを基本に考えます。その中で利用の仕方はいくつかあります。新車や新型車を企画し、設計する過程では、多くの人たちの間にたくさんの情報が流れていきます。例えば、設計図面はこれまで手で書いていましたが、コンピューターデータをもとに、三次元の設計をすることで、こういう部品を取り付けるのは可能だろうか、作業するのにこの部分に手が入るだろうか、などといったことが、実際に試作車をつくってみなくてもわかるようになりました。その結果、開発コストを抑えたり、衝突実験の回数を減らすことができたり、開発期間を短縮できるようになったわけです。開発現場にはITがどんどん入っています。
――衝突実験で使用する試作車はどのぐらい減りましたか。
張 これまでは100台ぐらい試作車をつくっていたのが、いまは60台ぐらいの試作車をつくればすむようになりました。
――生産現場ではITの取り込みが進んでいるのですか。
張 生産とか生産技術のところでは、トヨタでは昔からカンバンだとか電気信号を必要なところでたくさん使っていました。生産現場はすでに事実上の「IT化」ができあがっている。トヨタの生産現場は結構進んでいたんです。
――クルマ自体のIT化はどう進んでいくのでしょうか。
張 現在はカーナビ、そして携帯電話がクルマに入るところまできています。今後は応接間でパソコンやインターネットができるように、クルマはどんどんIT武装していくことになるでしょうね。いまやオフィスはもとより、家庭でもパソコンがあるのが普通になってきました。これからのクルマはまさに「走るオフィス」、「走る応接間」の機能を持つようになり、これがクルマの新たな商品力になるでしょうね。
――道路などのインフラのIT化も進むでしょうね。
張 そうですね。ITS(高度情報交通システム)の分野は、日本は世界でいちばん進んでいます。ITSについては、私からお願いして政府のIT戦略会議で取り上げてもらいました。VICSの情報はみなさんご利用になっていると思います。さらに自動料金収受(ETC)は準備がすでに進んでいますし、将来は自動走行にまで発展します。行政が整えていくインフラのIT化と、クルマのIT化が進み、双方が連携することによって、交通はより安全で効率のよいものになっていくでしょう。
――トヨタのITの活用としてGazooを積極的に展開していますよね。
張 IT、インターネットが普及したことによって、お客様に直接サービスできる部分が増えました。Gazooでは、インターネットを介してお客様がクルマを買う際の情報を提供したり、クルマ以外のさまざまな商品を販売するインターネットモールを実現しています。トヨタはクレジットカードを始める予定ですので、これもGazooと結びついて、ユーザーの皆さんにより便利なカーライフを送っていただけるようになると思います。
――IT戦略会議の話が出ましたが、張さんはこのメンバーですね。どのようなIT戦略が打ち出されるのですか。
張 これはですね、まだ最終的には決まっていませんが、方向としては世界最新鋭のインフラを日本に張り巡らそうという計画なんです。この計画における民間と政府の役割はまだ決まっていませんが、規制緩和の推進などで競争原理を採り入れて、この計画をどんどん進めるべきだという意見がたいへん多いですね。
――IT戦略会議は10月27日に、IT基本戦略をまとめ、5年以内に光ファイバー網などの超高速インターネット網を整備し、日本が「世界最先端のIT国家」を目指すことを掲げましたね。
張 IT戦略会議はスタートから基本戦略をまとめるまではいい線いっていると思います。森(喜朗)総理はじめ関係大臣を交えてここまできました。先日の内閣不信任案が可決され、解散にでもなって、IT戦略会議がふっ飛んだらどうしようかと心配していました。今後も国をあげてIT戦略を推進していくことが必要だと思います。
《写真=井手孝高》
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