ホンダ(本田技研工業)は13日、新たに代表取締役社長に就任した伊東孝紳氏の合同取材会を実施。今後のホンダの取り組みについて、新社長の所信を表明した。
昨年のリーマンショック以降、自動車市場全体に逆風が吹く中でホンダはどのように舵取りをするのか。まずは速報として、伊東新社長の談話をレポートする。
◆ホンダらしさを再び問い直す
「このような環境下だからこそ、ホンダらしさを強めていかなければならない」。伊東氏は談話の冒頭、静かに、だが力強く宣言した。
昨年から続く金融不況と、その後の実体経済の緊縮で自動車市場はまさに“逆風のさなか”にあり、ホンダでも生産現場や販売戦略において難しい舵取りが求められている。だからこそ、もう一度、社内外にホンダらしさを問いかけることを、伊東氏は行っているという。
「もともとホンダには『人間尊重』という基本理念があり、それが社内で共有されている。これはすばらしい基本理念であるのですけれども、それを今、もういちどブレイクダウンして(人間尊重とは)どういう事なのかを考えなければなりません」
「私なりの解釈を申しますと、ホンダは本田宗一郎が作った会社であり、彼の時代に大きく発展して礎を築いた。では、この本田宗一郎はどのような人物だったかというと、ほんとうに『人間くさい男』でありました。思いやりがあり、好奇心があって、そういう人間くさい人間(が大切だということ)を堅い言葉になおしたのが、『人間尊重』であると考えています」
「こういった人間くささ、人間らしさを、ホンダはもういちど重視しなければならない。商品、そして企業らしさにも(人間尊重の精神を)出していきたい。こういったことを、私は(多くの社員との)対話で伝えております」
◆「環境」はホンダに追い風
こうした基本理念を見直した上で、自動車メーカーは「モビリティの提供」を基本事業として推進していく。ここで伊東氏が重視しているのが、市場を取りまく環境と、お客様のニーズにおける「大きな変化の流れ」だという。
「まずは『環境技術』。これがモビリティを提供する企業にとって重要であることは、もはや疑いようのない流れです。この環境分野においてホンダが先鞭を取り、なおかつ“商品として楽しい”商品を提供したい」
「環境分野に関しましては、現在の市場環境の変化は、むしろ追い風であると考えています。(環境技術の開発と商品の投入に)専念しやすい状況になっている。本田宗一郎の時代から環境意識の高さや、そこに対するスピード感の速さは、ホンダらしさのひとつになっています。ですから、環境分野の意識が高まることは、このような市場環境の中で、ホンダにとって大きなチャンスであると考えております」
◆市場トレンドは「ハイブリッド」と「コンパクト」に
このような“環境技術のホンダ”を強化する上で、事業領域でいえば、とりわけハイブリッドカーのラインナップ拡充と技術の進歩に注力している考えだ。その先兵となったのは、今年の同社の大ヒット商品となった『インサイト』であるが、それに続く新車種投入も矢継ぎ早に行っていく模様だ。
「インサイトは我々のハイブリッドカーにおける技術的優位性を証明する商品となりました。今後も、当面は小型車分野にハイブリッド技術を展開していきたい。例えば、(新型ハイブリッドカーの)『CR-Z』は開発も佳境に入っており、来年の2月に国内市場に投入する計画です。また、来年中には『フィット』のハイブリッド化も行い、より幅広いお客様に『ハイブリッドカー』をお求めいただける環境を作っていきます」
「ハイブリッド技術は今後の(自動車メーカーの)競争力において不可欠ですので、小型車での展開と並行しまして、中大型車向けの開発も進めていきます。ホンダはハイブリッドカーの普及を加速させたい。そう考えまして、私自身、研究所の所長も兼任して、ハイブリッド技術の開発と市場投入に注力していきます」
今後のトレンドとしては、ハイブリッドカーの市場拡大と普及が続き、その上で「コンパクトカーへのシフトという流れも加速する」と伊東氏は見る。
「こうした市場変化に柔軟に対応していくことが、(ホンダにとって)重要になっていくでしょう」