イタリアを代表するカロッツェリアのひとつ、ザガートにインドのオートライン・インダストリーズ社が資本参加することになった。近年目立つのは、自動車産業におけるインドとイタリアの関係強化である。
フィアットはインドのタタ(タータ)・モーターズ社と開発・購買・販売分野での協力に関する覚書を2005年に調印した。それをきっかけに、翌2006年にはタータのラタン・タタ会長がフィアット・グループの社外取締役に就任するなど連携を進めている。
トリノのピニンファリーナは、4月にタタとインドに研究開発センターを設立することを発表。さらに同月末、経営再建のため第三者割り当て増資を行なうことを発表し、その引受先のひとつとしてタタを挙げた。
またカロッツェリア・ベルトーネも、結果としては今年1月破産に至ってしまったが、経営再建を模索する段階でインド企業と接触していたとする説が有力だ。
フィアットにとっては、インド企業と手を組むことで、巨大新興市場の足固めを図れる。カロッツェリアにとっては、欧州市場の縮小を新しい市場の研究開発業務で補えるうえ、資本のサポートも受けられる。いっぽうのインド企業としても、イタリア企業に蓄積された車づくりのノウハウを手中に収められる。
いずれもイタリア側が自動車業界の「有名ブランド」ゆえ、インド企業の大胆な戦略と捉えがちだ。しかし歴史を振り返れば、フィアットは東西冷戦の1960年代にも旧ソ連や東欧諸国とプラント輸出の交渉を進め、オイルショック後はリビアの出資を仰いだ経緯がある。カロッツェリアも今日まで存続してきた企業は、1960年代から日本、韓国、中国でいち早く新しいクライアントを開拓してきた。
こうしたイタリア企業の臨機応変の「したたかさ」も気に留めながら、動向を見守るべきだろう。