【トヨタ リコール問題】三菱 パジェロ の事故と類似

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当初は「経年劣化による車両不具合が原因」とされていた熊本県菊池市内で発生したトヨタ『ハイラックスサーフ』による逸脱事故。捜査も通常の交通事故の形態だったというが、捜査の過程で担当の捜査員すら想像しなかった方向に傾いていく。

事態が動いたのは、菊池市の事故から約2カ月が経過した2004年10月末だった。菊池市の事故で破損したものと同じ「リレーロッド」をトヨタ自動車がリコール対象としたのだ。対象となったのは、事故を起こしたハイラックスサーフと同型式を含む、1988年12月から1996年5月までに生産した33万0496台。リレーロッド自体の強度が不足しており、停止時にいわゆる据え切り操作を行い、負荷が掛かる操作を長期に渡って続けた場合、部材に亀裂が生じ、最悪の場合には折損するという内容。

捜査員が着目したのは不具合の報告件数だった。リコールに至るまでに国内で11件の不具合が報告され、うち1件は人身事故だった。この「人身事故1件」が菊池市の事故だということを警察が把握するには、さらに時間を要したが、類似の折損・破損トラブルが生じていたことを警察はこのとき初めて把握することになる。

トラブルの報告がメーカーに上がっていながら、メーカーがリコールなどの具体的な措置が取らず、結果としてトラブルが全国で続発してきたというのは、熊本市内で2000年6月に発生し、熊本南署が捜査を担当した三菱『パジェロ』のケースと類似している。このときはパジェロのブレーキホースに欠陥があり、ブレーキが突然効かなくなって前走車に追突するという軽傷事故が起きている。

このトラブルの際、製造メーカーの三菱自動車は正規のリコールを行わず、ディーラー併設の整備工場へ問題の部品を装着していたクルマが入庫した際、オーナーには特に知らせずに対策品と交換するという、いわゆるヤミ改修を行っていた。しかし、中古で流通していたクルマはメーカーが現有オーナーを把握できず、メーカーからサービス入庫の案内が送付できなかったために改修が行われないままだった。

熊本のパジェロ事故のユーザーも中古でクルマを購入しており、メーカーの所有者リストからは漏れ、ヤミ改修すらなされていない状態だった。同様に菊池市で事故を起こしたハイラックスサーフを運転していた男性も中古でクルマを購入していたことが後に判明した。

「折損が経年劣化を原因にしたものと仮定したとしても、約8年間も製造していたクルマだ。折損が今年に入って初めて発生したトラブルなのだろうか」、「三菱と同じようなヤミ改修が、もしもトヨタでも行われていたとしたならば…」などと、菊池市の事故を担当していた捜査員は考えたようだ。そしてこれが「もしかしてリコール隠しじゃないのか?」という考えに発展していく。

「経年劣化による車両不具合が原因」として処理されていた衝突事故が、当初は捜査員の誰もが思わなかった方向へ動き出した。(つづく)

《石田真一》

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