荒川静香が金メダルを獲得したトリノオリンピックのフィギュアスケート競技場は、『パラヴェーラ』(パラベーラ)だった。「パラ」とはイタリア語palazzo(=館)を略したものである。ところで同じトリノに、業界関係者の間で『パラジウジアーロ』と呼ばれている建築物がある。
場所は、毎晩五輪関連イベントが開催されている『メダルズプラザ』から徒歩約5分の、ソルフェリーノ広場だ。
建物の正式名は『アトリウム・トリノ』といい、設計を担当したのはジウジアーロ・デザイン社。初代フィアット『パンダ』やアルファ『ブレラ』のデザインで知られるスタイリスト、ジョルジェット・ジウジアーロが設立した、非自動車系デザインを担当する会社だ(現在は自動車系のイタルデザインと合併)。同社は、東京お台場にある日本未来科学館のライブラリーも手がけている。
アトリウム・トリノは2004年1月に完成した。双子型の2棟からなるもので、五輪の事前プロモーションと地域紹介に1棟ずつ充てられた。
特異なフォルムは、トリノ旧市街の景観を壊さず、かつ建築前に存在した樹木を伐採せず建てられるよう配慮したものである。内部は一部2階建てで、バール(喫茶店)、銀行ATMなども併設されている。
聖火リレーの際には、トリノ市街におけるバトンタッチ・ポイントとしても用いられた。併設の屋外リンクを聖火ランナーがスケートで1周。駆けつけたトリノ市民から熱い声援が上がった。五輪開催中の現在は、フィアット、コカコーラ、パナソニック、サムスン電子といったスポンサーのプロモーションに用いられている。
ただし、パラリンピック終了後に、どのような形で活用されるかは未定とのこと。ジウジアーロ・ファンとしては住居として分譲してほしいところだが、全面ガラス張り。中は見えすぎちゃって困るので、念のため。