最高速度370km/hを達成した8輪EVの慶應大学『エリーカ』。しかしその目的はスピードの追求だけではない。このEVの将来計画について尋ねたところ、量産プロジェクトの存在が明らかになった(エコカーワールド、11−12日、横浜)。
「2008年前後から量産したいですね。だいたい200台くらい」と語るのは、慶應義塾大学SFC研究所の堤健一所員。
「具体的な計画が決まっているわけではありません」と前置きした上での話なのだが「エリーカのイメージを残したスタイリングにして価格は3000万円ぐらいで、超高級車の市場に投入したい」という。
なるほど、現状では市場が小さく量産によるコストダウンが見込めないので、付加価値を盛り込むことで価格の正当性を高めるのは正しい戦略だろう。
マイバッハやロールスロイスを買う予算にもう少しだけ追加投資すれば、この稀少性が極めて高く、なおかつ環境負荷ははるかに小さなサルーンを手に入れることができると考えれば、現実味は大きくなってくる。
長期的には「エリーカベースの高級車が成功したら、次はもう少し小さく買いやすいモデル。それが成功したらさらにコンパクトで安価なモデルを開発して……」という流れを想定しているとのこと。
たしかに現在の大衆車メーカーも、創業当初は自動車そのものが非常に高価で稀少なものだったことを考えると現実的なプランだといえよう。
ちなみに展示されたエリーカは速度記録を達成した車両そのもので、インテリアはレーシングカーさながらだが、同大学の電気自動車研究室には自動車メーカーで実績を積んだデザイナーも在籍しており、商品性を追及したデザインも充分に可能だろう。
なお現在、慶應義塾大学は産官学協同のコンソーシアム「L2(エルスクエア)プロジェクト」を立ち上げている。
このプロジェクトは環境問題やエネルギー問題の抜本的解決を目指すことが目的で、例えば大型リチウムイオン電池を規格化して大量生産し、低価格化と普及を促進するなどのプランが検討されているという。