20日、F1マレーシアGPで見事2位を獲得したばかりか、トヨタに初の表彰台をもたらしたヤルノ・トゥルーリ。マシーンを降りるとき、彼は大きく十字を切った。そしてトロフィを受け取り、再び天を見上げた。
その背景には、ある事件があった。事故が起きたのは決勝2日前の18日午後、イタリア中部トスカーナの海岸でのことだ。山火事の消火作業にあたっていた飛行機が墜落した。地上に怪我人はなかったが、操縦士が2名とも死亡した。機械系統の異常を察知、海へ不時着を試みたものの失敗したと見られている。
実はその操縦士のひとりがトゥルーリと同郷の親友だった。トゥルーリ夫人も同様に操縦士と親しく、家族ぐるみの付き合いをしていたという。
そのためトゥルーリは予選2位が決定した直後、自らの好成績を亡き操縦士に捧げることを言明した。さらに決勝後のインタビューでも、「相対する感情がある」として、レース結果とトヨタチームに喜びながらも親友の死を改めて悼んだ。
イタリアでは、アミーチ=友人を家族同様大切にする国民性にフェラーリ不調が加わって、このエピソードがより大きく報道された。その結果F1ファンだけでなく、多くの人の涙を誘う一戦となった。