北海道警は11日、「戦車を壊した」として現金を要求するという前代未聞の振り込め詐欺事件が起きていたことを明らかにした。電話を受けた40歳代の女性は現金130万円を騙し取られている。
北海道警・伊達署によると、この事件は11日の正午ごろに発生している。
伊達市内に住む40歳代の主婦に、千歳市内にある陸上自衛隊の駐屯地で自衛官として勤務する息子を名乗る人物から「戦車を運転中に駐屯地の門にぶつけて、柱と戦車を破壊してしまった。弁償しなくてはならない」などという内容の電話がかかった。
男は現金170万円を要求。その振込先として福岡県福岡市内の銀行を指定した後に電話を切った。
女性は集めた現金130万円を指定された口座に振り込んだが、直後に息子と連絡が取れ、騙されたことに気づいた。女性はすぐに警察に届け出たが、現金はすでに引き出されていた。
警察では「女性の息子が自衛官であること」、「犯行が行われた時間帯には、息子と直接の連絡が取りにくい」など、個人情報を深く知る者が犯行に関わった疑いが濃いとみている。息子が自衛官であるのは事実だが、戦車の操縦資格は有していないという。
「戦車を壊した」と称して現金を騙し取る事例は過去に無く、極めてレア。
任務中に戦車を破壊したとしても、通常は防衛予算の中から修理費を捻出するため、個人に対して現金の請求は行われない。ましてや個人名や民間企業名の口座が振込先に指定されることもない。
北海道は自衛隊員の家族も多いことから、警察では「同様の電話があった場合、現金を振り込まずに警察、もしくは自衛隊に照会してほしい」と呼びかけている。