1月6日、ADSL接続事業者のイー・アクセスが、かねてから表明していた携帯電話事業参入の概要を発表。あわせて携帯電話事業専任の企画会社イー・モバイル設立の発表を行った。
現在、日本の携帯電話キャリアはNTTドコモ、auとツーカーセルラーを持つKDDI、ボーダフォンの4社3グループ体制。
イー・アクセスおよびイー・モバイルの代表取締役会長兼CEOの千本倖生氏は、「日本の携帯電話ビジネスの市場規模はおよそ8兆5000億円。これを実質3社がコントロールしており、モバイル分野に関しては(価格競争が進まず)消費者が損をしている。新規参入でキャリアが増えることで、携帯電話の料金が今の半分程度になっても不思議ではない」と強調。
イー・モバイルも含めて2社“新規参入”を2006年までに認めることで、既存キャリアと新規参入キャリア、新規加入キャリア同士での価格競争が起こり、世界一安い日本のADSLのように、消費者にメリットが還元される仕組みができると語った。
現在、日本の携帯電話ビジネスでは、800MHz(ドコモ2Gとau 3G)と1.5GHz(ボーダフォン2G)、2GHz(ドコモ3Gとボーダフォン3G)の周波数が使われている。イー・アクセスは、総務省によって新たな割り当てが検討されている1.7GHz帯への参入を検討しており、ドコモやボーダフォンと同じW-CDMA方式を用いる予定だ。
携帯電話番号を変えずに携帯電話キャリアを変更できる「番号ポータビリティ制度」の導入が予定されている2006年のサービス開始を目指す。サービスエリアは当初は大都市中心だが、3000億円の設備投資を行い、できるだけ早いタイミングで全国の人口カバー率を90%以上にしたいという。
実際のサービスはどうなるのか。イー・アクセスおよびイー・モバイルの代表取締役社長 兼 COOの種野晴夫氏は、既存キャリアの料金プランが複雑化しすぎている事を指摘。
「シンプルで安価な料金体系を作りたい。データ通信は定額制を検討しています。音声料金は他事業者向けの通話は接続料があるので定額にできませんが、自社ネットワーク内で完結するイー・モバイルユーザー同士の通話に関しては通話料も定額で検討していきたい」と語った。
端末は、音声とデータ通信ができる一般的な携帯電話タイプはもちろん、ポータブル音楽プレーヤーやデジタルカメラ、ゲーム機に組み込んで専用の通信サービスを提供するモジュールタイプを積極的に展開していきたいという。
また、様々なメーカーや接続事業者に通信インフラを貸し出す「ホールセール(回線卸売り)」市場を開拓する。
さらにコンテンツプラットフォームに関する考え方も、既存キャリアと大きく異なる。イー・モバイルでは、iモードやEZwebに代表されるキャリア独自のコンテンツプラットフォームの構築を考えていない。
「携帯電話タイプの端末は、インターネット上のコンテンツに自由にアクセスできるものを考えています。既存キャリアのように独自コンテンツ仕様を作って、コンテンツの囲い込みをする考えはありません」(種野COO)。
しかし、少額決済などコンテンツ課金プラットフォームの提供については「検討している段階」(種野COO)。またホールセールを積極的に推進するため、イー・モバイルから回線提供を受けた会社が専用のコンテンツポータルを構築する可能性はある。
携帯電話ビジネスの新規参入については、イー・アクセス以外にも、ソフトバンクが強い意欲を示している。既存キャリアも、ボーダフォンは反対の姿勢を見せているが、NTTドコモとKDDIは市場の活性化に繋がる点から新規参入自体は歓迎する「大人の対応をしていただいている」(千本CEO)という。
ソフトバンクがNTTドコモとKDDIが現在使用中の800MHz帯の再割り当てを求めたことから、携帯電話市場への新規参入が問題化してしまったが、1.7GHz帯への新規参入に関しては障害が少ない。
ソフトバンクが800MHz帯獲得に向けた矛を収めて、1.7GHz帯での参入という方向になれば、06年から07年頃、携帯電話市場に新規参入の風が吹く可能性は高いだろう。